【星幽塔】第一階層　ＱＵＥＳＴ！下水道のスライム退治｜リアクション

【星幽塔】第一階層　ＱＵＥＳＴ！下水道のスライム退治

　合体したスライム達は動きこそ素早くないものの、目の前の人間を敵と認識したのであろう。溶解液を容赦なく吹き出しながら攻撃してくる。それをなんとか避けながら、衛達は後から合流した一行に今までの経緯を説明した。

「後数匹とはいえ、風と火が効かない奴か……やっかいだな」
　礼二郎が考え込む。そこに修が言った。
「水が使えないか？」
「水？」
「山ほどあるだろう、そこに」
　足下に飛んできた溶解液を華麗に避けながら、修が顎で水路をくいっと指した。
「なるほどな」
　礼二郎の目が大きくなった。
「水を勢いよくぶつければいけるかもしれない……風の魔法で」
　その考えに勘三郎が賛成する。
「いいんじゃねえ？　ぶわーっと派手にやろうぜ！」
　しかし遥斗が竹刀を振るいながら眉をひそめる。
「それならスライム達を一ヶ所に集めないといけなくなるが……」
　その言葉に衛が大きく返事をした。
「俺！　その役俺がやる！　今度はかち合わせないように気をつける！」
「危なくないか、衛氏」
　友人を気遣った楓子に瓢がひょいと言った。
「ああ、スライムの残骸は溶解液を通さないよい。１つ持ってれば何とかなるんじゃないかねえ？」
「―――大丈夫か、卯木？」
　礼二郎の言葉に衛が親指を立てる。全員が合体スライムを倒すべく動き出した。

「鬼さんこちら、手の鳴るほうへ！」
　衛がゆっくり通路を走りながらも大きく動き、合体スライム達の注意を引きつける。スライム達は彼の姿を認めると、溶解液を吹き出しながらその体の向きを変え、衛に向かって一斉に動き出した。
　衛は巧みに避けながら道の奥までスライムを誘導していく。しかし一身にスライムの攻撃を受けている彼の皮膚は、ところどころ火傷のようにただれてきていた。
（……いってーけど、もう少し！）
　スライムの残骸で溶解液を防ぎながら、衛は歯を食いしばる。

　風の力が使える遥斗、勘三郎、楓子、日和、美咲紀は、それぞれがいつ力を発動してもいいように精神を集中させる。その周囲を他の仲間が油断なく囲み、守っていた。
　皆、疲弊していた。そうだろう、モンスターの個体１つ１つの力は大した事がなかったが、何せ数が多かった。それを慣れない星の力や武器を駆使して戦っていたのだから。
　それでも誰も泣き言１つ口にしない。皆の思いは１つだった。
（これが最後。皆の力を合わせて少しでも大きな力にしてみせる）
　皆が衛の合図を固唾を呑んで待っていた。

　合体スライム達が徐々に衛の元に集まり始める。そして彼の姿が見えなくなり。
「いっくぞー！！」
　掛け声と共にスライムの間から衛が高々と飛び出した。ろっこん＜月面ラビット＞だ。
　その声を合図に５人の＜魔風の光＞が発動される。ボウッと緑の光が５人を半円状に包む。そしてそこから生まれた大きな風が一直線に水路に向かうと、水を大きく跳ね上げ一気にスライム達に叩きつけた。
　巨大で強力な水鉄砲をくらった合体スライム達はひとたまりもなかった。
　大量の水が引いた時には、そこにスライム達の姿はなく。ただでろりとしたマーブル模様の残骸が幾つも残されていた。