誰もいない街｜リアクション

誰もいない街

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「つ、着いた……」
　由貴奈が「パルラ・フラーマ」にたどり着いた時には、空が燃えるように染まっていた。
「徒歩じゃ遠かったよぉ」
　肝心の電車が、待てども待てどもやってこなかったのだ。仕方なく歩くことになったが、普通なら駅アナウンスで情報が入るところだ。
「誰もいないって困ったもんだねぇ」
　よろよろと501号室へ。彼女は疲れたせいで気づいてないが、ごく自然な動作で移動し、鍵を開けて入っていく。
　そして由貴奈を迎えたリビングには、新たなメッセージと食べ物が置いてあった。
「む。これはクッキー？」
　過去の自分が用意したものだろうか？　と口に入れる。
「美味しいけど……まぁ普通に美味しいだけだね」
　今度はクッキー皿の下にあった、メモに目を通す。
「ええと……『薄力粉120gバター60g、味を変えるなら抹茶やチョコを適量……』。これクッキーのレシピじゃん！」
　意味があるかと思いきや全くなかったメモに、由貴奈は脱力する
「でも、これ以上手がかりはなさそうだし、クッキー作れってことかなぁ……」
　もうすぐ晩御飯だが、歩き回ったせいで小腹もすいてきた。作るのも一つの手段だろう。
　結局、由貴奈はクッキーを作ることにした。

「そういえば、シンプルなビーズのアクセサリーがあったっけ」
　遠く自宅がに見えてきたところで、不意に水樹は思い出した。
　自宅を探し当てるまでかなり時間がかかったので、空は炎を思わせる不安な赤色をしていた。
　その空を見ていると思い浮かんできたアイテムだった。なぜ思い出したのかわからない。
「なぜか大切にとってあるのよね。小学生が作るようなものなのに」
　不思議に思ったが、それだけずっと持っているのなら、メモにあった『大切なもの』なのかもしれない。
　水樹は自宅に入ると、自分の部屋を探し始めた。やがて目的の、ビーズアクセサリーを見つける。
「他にも高価そうなものはあるのよね……」
　自分の判断に首を傾げたが「違ってたら別のを試せばいっか」と楽観的な思考でアクセサリーを、顔の見え出した月にかざす。
　そして変化が起こった。