ねこモンＧＯＧＯ！｜リアクション

ねこモンＧＯＧＯ！

【桜台のユーレイねこモン】

　佐藤瀬莉は、ねこモンが大好きな、星ヶ丘在住の小学生の女の子である。
「うーん。なかなか図鑑が埋まらないなー」
　最初は順調に図鑑を埋めていたものの、だんだんとせっかく見つけても既出のねこモンということも多くなってくる。
　そのたびに、瀬莉は「ちっ……」とお人形のような顔からは想像もつかない舌打ちをする。瀬莉はとってもおませな女の子である。
　そうして、さらにシーサイドタウンや旧市街にも足を延ばす瀬莉。
　と、そのときだった。
「え？　桜台の墓地に何かいる？」
　瀬莉は同級生の男の子から、墓地の方で謎のねこモンを発見したという話を聞いた。
「なんか本物のお化けっぽくて怖いから逃げて来たんだけど……」
「あ、あたしは、お化けなんか怖くないもんっ」
　本当はちょっと怖かったが、天邪鬼なところのある瀬莉はそんな自分の気持ちを押し隠して墓地へ向かった。
「……お、お化けなんかいないもん！」
　ちょっと震え声で言いながら、瀬莉は大胆に墓地を探索していく。
　やがて、楽観的な彼女は、
（なんだ、やっぱりお化けなんていないじゃない）
　と、すでに鼻歌まじりで余裕の表情を浮かべていた。
　そして、

「あっ、ニャーストみっけ！」

　瀬莉はついに『ニャースト』を発見する。ニャーストは、ねこっぽい吊り目の顔とユーレイっぽい宙に浮いた身体との組み合わせが何とも言えない愛嬌を持つゴーストタイプのねこモンだ。

「いけ、ねこモンボール！」
　瀬莉は画面中央下部のボールマークをタップして、捕獲用のボールを投じる。
　ニャーストの動きは素早く、最初の一つ目、二つ目のボールは虚しく空をきる。
　だが、ついに三つ目のボールがニャーストのおしりにヒットして、一旦はボールの中にニャーストが閉じ込められる。
　ニャーストはボールの中でじたばたと暴れ、そのたびに地面に転がるボールの赤いランプがチカチカと明滅する。
「そ、そのまま、そのままっ……やったー！」
　そして、ついに三度目の点滅が終えたあたりで、ランプの光は消えて、ボールはピタリと動かなくなった。捕獲成功のサインである。さっそく図鑑を開き、能力値（ステータス）もチェック。そのデータは、外見も、能力も、充分にこれまでの苦労に見合うものあることを瀬莉に力強く告げていた。

「ニャースト、ゲットだぜ！」

　瀬莉はスマホを高々と持ち上げて、お決まりの台詞を言った。
　ときおり「ちっ……」と舌打ちもするおませな少女の瀬莉だが、そのときばかりは、その表情も言動も、年相応の普通の女の子のそれに見えた。