鬼のいる日常｜リアクション

鬼のいる日常

【末っ子長男の憂鬱】

　同じ頃、花厳望春は二月の寒空の下を歩いていた。
（うう……。なんで、俺が姉さん達のパシリに行かないといけないんだ……）
　望春の目的地はケーキ屋だった。
　彼は四姉弟の末っ子で、それゆえ姉には頭が上がらないところがあった。
　ゆえに、こうして今も寒空の下、パシリに駆り出されている。
「うう、寒い……。こんなことなら、俺が自分でケーキ焼いてあげればよかった……」
　と、誰にでもなくこぼしつつ、ちらりと視線を流したときに、望春は見た。
「……あ、歩きスマホ。危ないなー……って、鬼……！？」
　それは、全身を真っ赤にし、虎柄のホットパンツを穿いた、いかにもな鬼だった。
　あまりの存在感に、何かの見間違いかと、目を擦ってもう一度鬼のいた方を見やる。
「あ、れ……？」
　そのときにはすでに鬼の姿はなかった。
「……気のせい、だったのかな？」

　望春は気を取り直してケーキ屋へ急いだ。

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