鬼のいる日常｜リアクション

鬼のいる日常

【鬼と豆】

　楓子が赤鬼と出逢う――その少し前。
　立花なつと、卯木衛は、学校からの帰り道で赤鬼を見かけていた。
「わ、見て、まもる。あの子、歩きながらスマホしてるよー！」
「へ？　あ、ほんとだ。危ないなー……」
　どこか感心しているような友人の口調に苦笑しつつ、衛もまた赤鬼の方を見て、
（ん？　なんかアイツ、変な感じが……って、角っ！？）
　そして、そのチリチリのパーマ頭の隙間から、二本の角に気づいた。
「な、なつくん、あいつ、鬼だぞっ！」
「えっ……。あー、ほんとだ。歩きながらスマホができるなんて、さすが鬼だよねー」
「え、いや、それは鬼関係ないと思うけど……じゃなくて！」
　およそ現代人とは思えないなつの発言に突っ込みを入れつつ、
「と、とにかく何とかしないとマズいよな……」
　と、衛はどうしたものかと考える。
「鬼かぁ。鬼って言ったら、やっぱり豆だよねぇ」
「それだぜ、なつくん！」
　衛はポンと手を打った。
「そう。鬼っていったら、豆だよなー。だったら、あいつに豆料理でも食わしてやればいいんじゃないか？」
「おー、いいんじゃない？　じゃ、今日のご飯は豆料理でまとめようか。ポークビーンズ、豆のサラダ、あとは――」
「俺、麻婆豆腐食べたい！」
「いいねー。オッケー」
　瞬く間にメニューが決まり、衛は早く美味しいご飯が食べたい気持ちを抑えきれなくなる。
「よし、じゃあ材料買いに行こうぜ！」
「あ、まもるー。そんなに急がなくても、材料は逃げないよー？」
　居ても立ってもいられないといった様子で駆け出した衛の背中を、なつは慌てて追いかけた。

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