春のアウトドア体験！　ついでにドボン。｜リアクション

春のアウトドア体験！　ついでにドボン。

「うっ……。腰がぐきって。ぐきって言ったー」
　その後のトライで『ざぶざぶサーフィン』をクリアしたみつびが、２度目の落水時に変な風に捻った腰をさすりながら歩いて行き見えたのは、水上に渡されたロープを、滑車のついた棒につかまって向こう岸まで滑走するポイント『びゅんびゅんブランコ』だった。

　丁度陽毬が挑戦していて、それを見ていたリプカが、紅緒と刀を振り返っている。
「わかった！　この空中ブランコみたいなのを動かして向こうまでいけばいいのね！」
「落ちないように気をつけるんですのよっ」
「難しそうだけど頑張ってみるよ！」
　リプカは棒を握ると、無駄にハラハラしている紅緒とサムズアップをくれる刀へ笑顔を見せて、足を勢い良く蹴った。

「わー、楽しそ……って、ええ？」
　能天気な笑顔で見ていたみつびは、近くにいた子供たちがリプカ目掛けて水鉄砲を構えているので目を剥いた。
「さっきの筋肉ムキムキのお兄ちゃん——蛇那伊のことだ——は強くてビクともしなかったけど、今度のお姉ちゃんたちならすぐ倒せそうだな！」と物騒なことを言っている。
「いきなりの修羅場？　どーゆーこと！？」
「はは、ここにある水鉄砲で撃っていいんだって☆」
　通りがかった武道が教えてくれた箱には、確かに水鉄砲が詰め込まれている。
「ふむふむ、『顔を狙ったり、目に入らないように気をつけましょう』か。……うーんどれが一番飛ぶかな？」
　小さな子供たちが押し合いへし合いしている後ろから、みつびが水鉄砲物色していると、リリエルが走ってやってきた。無事に落水した紅緒と、陽毬とリプカへ片手を振りながらゴールした刀の番も終わって、次はメリィの順番なのだ。
「これ私も使っていいんですか？　メリィちゃんに当てちゃったりしても……」
　リリエルが無邪気に笑って水鉄砲を装備している。
「お友達にいたずらするの？　おもしろそう、みつびちゃんも加勢しちゃうっ！」
　みつびがピンクの水鉄砲を選んでリリエルの隣に立つと、武道に水鉄砲を取って貰えたようでミーツェも目をキラキラさせながらやってきた。
「仲間に入っていいですか、なー？」
「わーい！　お友達がたくさん！　よーし、メリィちゃん覚悟です！」
「せんそーかいしー、わー！」
　みつびの掛け声と共に飛んだ水は、太陽を浴びてキラキラ輝いている。子供たちと彼女たちの笑い声は、客たちの楽しさを昂ぶらせ、自然公園に少し早い夏を呼びこんできたようだった。

　　　　＊

　さて、最後のポイントは『グラグラ橋』。
　水上で足元と手元に渡された２本のロープを伝って進むシンプルなものだが、故に難しい。
　桜が去年の夏休みに苦い経験をしたのはまさにここで、バランスを崩した途端のドボンだった。
（あの時は、ロープを握った手が汗で滑ってしまったから……）
　桜は自分の順番がくるまで、Tシャツで念入りに水や汗を拭った。先にクリアした双子の動きも見ていたから、やり方はなんとなくでも掴めている。
（万が一のための競泳水着も装着済み。さて結果はどう出るか……）
　遂にロープを握る時がきた。桜は息を止めて、慎重に一歩を踏み出した——。

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