バド＝ミン＝トン、スポーツ悪魔との邂逅｜リアクション

バド＝ミン＝トン、スポーツ悪魔との邂逅

八神修とナイフ悪魔との試合も終盤戦。
「ほとんど丸裸にされてしまったな」
　点を入れられるたびに風が衣服を刻み取り、修の体は地肌が見え、所々に切り傷もあった。
　相手のナイフ攻撃や時間止め攻撃になんとか対処し、ここまでは互角。
「次か」
　相手の行動パターンは解析できた。次の打ち合いで勝敗が決まる。
「最高の球で来たまえ」
　悪魔のサーブ。楽々な軌道だが、相手にはタイムストップがある。
（ここで止めてくる！）
　修の予想通り時間が止まり、動き出したころにはシャトルは地面すれすれ。
　しかし修も事前に予想し、シャトルへ飛びついていた。ナイフを避けながらぎりぎりで打ち返す。
「目には目を」
　集中する修。使わずに済ませたかったが、このままではこちらの体力が持たない。
「はっ」
　修の『分解』。分解対象は、相手コートを形成する石だ。
　騒音とともに崩れ始める舞台。動揺する悪魔。
　さらに修は意識をコートの破片へ集中させ、自在に操作した。高度なろっこん能力の披露だ。
（ここにシャトルを紛れ込ます）
　鍛錬と経験が生み出した修の極技だ。
　ナイフで応戦する間も時間を止めるタイミングもなく、シャトルは相手の陣地へと落ちた。

「勝ったか」
　悪魔が消え去るのを見届けると、その場に倒れ込む。
（ふう。少し無茶をしすぎた）
　自分の残り体力も計算済みだったが、少し誤差が出たらしい。
（しばらくこのまま休もう）

　残る勝負は巨漢悪魔と戦う椎井莉鳥と鷹城空だ。
「胸が重くて……体が前に倒れそう」
　だいぶ点を積まれ胸が肥大化した莉鳥、思うように動かなくなった自分の体に不満を漏らす。
「巨乳の女性は毎日こんな苦痛を味わっているのか」
　はち切れそうになる服を押さえながら空はサーブを打つ。
「行くぞ、次は戦車サーブ！」
　自転車から始まった必殺も順当にギアを上げ、戦闘兵器レベルにまでアップした。
　シャトルの先から砲弾を撃ち出しながら、重厚な速度で相手コートへ。
「タイフーンも！」
　莉鳥の必殺で相手の動きを鈍らせる。
　巨漢悪魔は強烈なスィングで対抗するが、戦車シャトルは重く、返すのが精一杯だった。
「ナントカ文明のために私は勝つ！」
　いよいよ最終局面。
「敢えてギアを落とす！　パラシュートスマッシュ！」
　兵器シリーズから離れ、空のふんわりパラシュートを模したシャトルが巨漢悪魔の上空を舞い回る。
「さあ打ち返してみろ！」
　これはチャンスとばかりに、力の限りでシャトルを打とうとする巨漢悪魔。が、しかし。
　ラケットの風圧が揚力となり、シャトルは再び空へと舞い上がる。
「ふふ、そのスマッシュは一筋縄ではいかないぞ！」
　力技が決まらないと分かると、今度はゆっくりとした速度で打ち返そうとする。
「えいっ！」
　そこですかさず莉鳥のタイフーン。パラシュートシャトルはまた上へ。コートの端へと逸れていく。
「よし、このときを待っていた！」
　慌ててシャトルを追う巨漢悪魔の足元に向けて念じる。ろっこん『イエローデビル』、バナナを召喚した。
「油断大敵だ！」
　盛大に滑る巨漢悪魔。コートをはみ出し、せり上がった舞台の外へと落ちていく。
「戦闘不能ね」
　胸の重さで落ちないよう気をつけながら、莉鳥は悪魔が消え去るのを見届けた。
「わ」
　胸の重さが取れ、後方へ倒れ込む。

　これで全ての悪魔は去った。

「ふう、これでナントカ文明は救われたか」
　空が言うと同時に、舞台が元の位置へと戻っていくのだった。

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