バド＝ミン＝トン、スポーツ悪魔との邂逅｜リアクション

バド＝ミン＝トン、スポーツ悪魔との邂逅

　別の舞台でも試合が動き始めていた。
「うーん、なんと形容したらいいのでしょうか」
　本条小萩は対戦相手の風貌に、険しい表情を隠すことができなかった。
「触手がくねくねくねくねくねくねと〜気持ちが悪いです」
　伸縮する触手に思わず身を引かせ、断言した。
「小萩の美少女さが引き立ちます！」
　触手悪魔を相手するのはもう1人。最高神バド様に選ばれし愛の戦士、鎌八まもるだ。彼もまた下唇を噛みしめ相手を見据えている。
「おーまいゴッド、バドよ見てくれ、なんたる悲劇だ」
　くねくね無数の触手にではなく、悪魔の顔にまもるは嘆いている。
「まさかポニーテールだとは！」
　ポニテ狩人の血が騒ぐ。
「ゲームに勝てば好きにしていいのかな？」
　ラケットを持つ手に力が入る。
「それならレディ……触手尽くしだけれどレディと呼ぶよ……オレが勝ったら、どこかでお茶でも……ってもう打ってきちゃった！？」
　触手悪魔のサーブ、とともに触手が地面を這い伸びてくる。
「やっぱりこちらの言葉は通じないか」
　触手を避けながら、持ち前の運動神経で打ち返す。
「突然ですが！」
「おわっつ、ホワッツ？」
　小萩が叫び、まもるがオーバーリアクションで言い返す。
「普段はか弱いごくごくフツウの可愛い女子高生ですが、今の小萩には必殺技があります！」
「な、なんだってー（ここは乗ってあげたほうがいいのかな？）」
「行きますよー！」

　超重力グラビトン落とし！

　なぜか小萩の声にエコーがかかる。
　直後、相手コートの重力が数十倍に増した。
「ふふふー重力を操る能力ですよー」
　触手悪魔の動きが目に見えて鈍る。
「そしてシャトルの動きはー！」
　重力加速度が増し、シャトルは鉛のごとく急転直下した。小萩＆まもるチーム、1ポイントゲット！　一体何ポイント取ったら勝ちなのか分からないが、先制だ！
「完璧な作戦です！」
「重力が大きくなれば羽球も速く落ちるのか〜」
　感心のまもる。
「慣性力とか空気抵抗とか？　まあとにかく色々あってそうなるんですよ！」
　サーブ権が移り、小萩が打つ。
「そしてこの能力は、打ち返すときにも役立ちます！」
　触手悪魔が返してきたシャトルに小萩は集中する。
「アイシー、今度は重力を弱くするんだね」
「その通りです！」

　超重力グラビトン落とし！

　シャトルの減速度がよりゆっくりになる。反して小萩たちの動きは身軽い。
「まるで月にでもいるかのよう！」
「素敵でスマートな能力だけど、そのシャウトは毎回しないといけないのかい？」
「そうです！　必殺技は叫んでなんぼですから」
　ゆとりを持って打ち返そうとする小萩だったが……。
「あ！」
　弱重力の災い。触手がスピーディーに小萩の足に絡んできた。
　ズデーンと盛大に転ぶ小萩の頭に、シャトルがちょこんと着地する。
「あいたた……気を抜いて重力を解いてしまいました。まだ使い慣れていませんねー」
「ふーむ困った触手ちゃんだ」
　簡単には勝てそうにもない。
「ちょっち気合入れさせてもらうよ。ポニテのために！」
　罰ゲーム。小萩とまもるの精神年齢が一才分下る。

このページにイラストを設定する