バド＝ミン＝トン、スポーツ悪魔との邂逅｜リアクション

バド＝ミン＝トン、スポーツ悪魔との邂逅

「なるほど羽球だな。一般的なものと少々趣を異にしているが」
　隣の舞台で行われている試合を観察し状況を分析するのは八神修。
「格闘技じゃなくて良かった」
　素振りをしながら正直な感想を吐く。直接やり合う戦いであったら、運動の不得意な修の分が悪い。
「さて俺の相手は……」
　網の向こうに現れる悪魔は、一見ひょろっとした、修と同じような体格の持ち主だった。
（何が出るか）
　サーブを開始する悪魔。
（至って普通の動きだな）
　当たり障りのないサーブが飛んでくる。これなら楽々打ち返せそうだ。
「！」
　視界の端に光る何かが見えたのは、修がラケットを持ち上げた瞬間だった。
（刃物か）
　どこから取り出したのか、悪魔がこちらにナイフをいくつも放ってきた。
「持ち込みは不可ではないのか」
　網の上や下から飛んでくるのをかわす。地面すれすれにまで落ちたシャトルを打ち上げるも、山なりの緩い軌道になってしまい、悪魔にスマッシュで打ち返されてしまった。
　強めの風が足元から天空へ向けて吹き上がる。
「先取されたか」
　相手の常軌を逸した動きにも動揺を見せない修。
「予想外の動きをすることは、予想済みだからな」
　これまでの経験が活かされている。
　再びサーブの構えを取るナイフ悪魔。
（まだ秘策を持っているな）
　先ほどと同じようなサーブ。修が返す動作に入るとナイフが飛んでくる。
（対抗手段はこれしかない）
　視界内のナイフたちを一瞥、ろっこん『分解』で一気に粉砕する。
「あとは悠々打ち返すだけだ」
　とシャトルに向かって走るが、
「？」
　修が動き出したときにはすでにシャトルは地面へ落ちていた。
（どういうことだ？　視認できない速度でシャトルが落ちた？）
　いや。修は頭を振る。
　加速する兆候すらなかった。
（なるほど……やっかいな相手だ）
　罰ゲーム。つむじ風が舞い上がり、修の衣服を切り刻む。
（……やっかいだ）

このページにイラストを設定する