アモーレ４アモーレ！｜リアクション

アモーレ４アモーレ！

　慌てふためく萌は、ドレスを持ち上げて天使や悪魔たちに語りかける。
　その向こう――椅子に着席に周囲を見回して居る野菜原ユウを見かけた萌はその顔いろを更に青くしていく。
「ユ、ユウくん……」
　夏朝は「多分死んでいない」と言っていた。だが、萌にとってはこの状況こそイレギュラーなのだ。
「ユウくんも死んじゃったの！？」
「え、死んじゃったの！？」
　驚きに顔面蒼白の萌の様相に思わず鸚鵡返しとなったユウは「マジかよ」とぽつりと漏らす。
　天界と魔界の間、つまりは『あの世』なのかと懸命に己の考えをユウへと話す萌は死んでいない事を確認したいと懸命にドレス姿で駆けた。
「死んでませんよ」
　優しげな声音に、萌が慌てて振り向けばヴァレンシュタイン氏が白いひげを撫でて微笑んでいる。
　アモーレのオーナーである彼が言うには「ここは不思議な世界」なのだそうだ。
　萌が死んでいる訳でもないし、ここがあの世であるわけもない。天界と魔界の間に出来たドリームでラブの溢れた空間なのだという。
「し、死んでない？」
「はい。死んでおりませんよ」
「ボクも、ユウくんも？」
「はい。大丈夫ですよ」
　幾度も繰り返し確認する萌にヴァレンシュタイン氏は優しい笑顔で幾度も答える。
　やったあ、とへたり込む彼女の背を撫でてユウは「大丈夫か」と問い掛けた。
（ユ、ユウくんがやさしい――……！）
　普段はトラブルメイカーな彼が落ち付き、萌がトラブル側になっているのは新鮮だ。
　ヴァレンシュタイン氏は結婚式も行えるドリームな空間だと優しげに語りかけてくるのだ――萌にとって、これはチャンスなのかもしれない。
　周囲を見回せばラブの星屑を零れさせているカップル達やそれを楽しむ天使と悪魔ばかりだ。
「夢……なのかな」
「夢だろーな」
　同じ夢を見ている。それだけでも嬉しいと萌は八重歯を見せてへらりと笑う。
　結い上げた髪を揺らし「ユウくん」と彼の手を握りしめた萌は己の愛情をぶつける様に結婚式へと彼を誘った。
　勿論のこと、拒否権はない。
　――ボクの裸を見た責任取ってね☆

　

　誓いのキスを、と進める天使の声と共に溢れだした星屑。
　天使達がその星屑を拾い集めてにこりと笑い厨房へと誘ってゆく。
　結婚式を眺めていた日和の許へと勧められたのは萌のラブで出来た『カレーうどん』。
「カレーうどん……？」
　萌の愛はちょっぴり辛口なのだろうか。だしがマイルドに調和し、つるりと食べられるうどんを啜りながら「おいしい」と呟く日和は沢山のラブの味の違いに感動した様に瞬く。

「あっ――――――――！！？」

　一方で、ラブの星屑の顕現元・萌はハプニングに見舞われていた。
　カレーうどんをウェディングドレスへとぶちまけ、慌てたままに老天使へとカレーを被せてしまったのだ。
「ちょ、お前……！」
「はっはっは、お気にせず。お転婆な花嫁さんもお可愛いものですよ」
　にこりと笑った老天使はその名前をフリードリヒと言うらしい。
　共に語らい、けらけらと笑った老悪魔のコカドリーユは「愉快じゃなあ」と両の手を叩き合わせている。
「う、うう……ごめんなさい！」
　お転婆と言われてしまい、思わず頬を赤らめた萌はユウに椅子へと座らされカレーの処理を手伝って貰っている。
　ああ、なんて幸せそうな光景だろうかと瞬く日和はゴシック調の椅子へと深く腰掛け、次の入場者を待って居た。
「あ、ユウくんのラブはどんな味になるのかな？　ボク、ユウくんのラブを食べてみたいなぁ」
「ラブ？　そんなの」
　ころりと転がった星屑に萌が絶叫し、カレーが再度零れるまで数秒前……。

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