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プロムナードの夜
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ポケットティッシュを表返えす。
また裏返して、もう一度見る。
これでティッシュに挟まれたチラシが消えていたら手品だが、あいにくと
南戸河 蔵人
は手品師ではない。
そもそも、いま自分一人しかいないのに、自分で自分に手品を披露してどうするのだ――などとついつい不可思議な方向に発想が飛躍してしまうのは、作家という商売のサガだろうか。
チラシに目を落とす。
「ふーむ、割引券……」
これは彼が少し前、商店街で何気なく受け取ったティッシュである。ついさっきポケットに手を入れて存在に気付くまで、もらったことすら忘れていたものだ。
キャバクラのチラシだ。
しかもその店『プロムナード』は、このとき蔵人が立っているまさにこの場所、キャットロードの目と鼻の先にあるという。というか、看板が見えているではないか。もう店はオープンしているものの、まだまだ入店は可能だ。
単なる偶然の一致だが、しかし運命的な一致と言えないこともない。
――「神はサイコロを振らない」と言ったのはウィトゲンシュタインだったかな、いや、アインシュタインだったか。
それにしても、キャバクラか。
蔵人も昔一度だけ、こういうお店に連れていってもらったことがある。なるほどこんなものか、と思っただけで、以後は行く機会もない。なんとなく入りづらいのも事実であるし。
だが興味がないわけでもなかった。
「いい機会だ。ひとつ行ってみるかな」
そう決めて、彼はポケットティッシュを表返してまた裏返した。
なんと! チラシは消えていた!
……表に返したときに彼が素早く、指先で抜き取ったからだが。
――だから、自分で自分に手品を披露してどうするんだ。
ちょうどピークの時間帯らしい。薄暗い店内は、かなりきっちりと埋まっている様子である。
「どうぞこちらへ」
フリーを希望した蔵人は、奥まった席に案内されていた。
すぐに嬢が、穏やかな笑みとともにやってくる。
ふわっと春のそよ風が吹いたよう。
「泰葉と言います。よろしくお願いします」
ティッシュのチラシによれば、たしか『ナンバーワン』と書かれていた嬢だ。瞬間的に、来て良かったという気がした。
泰葉が名刺を出してきたので、すぐに蔵人もこれに応じた。
「どうも、私、南戸川蔵人って言います。一応作家で子ども向けの本書いてるんですよ」
ええと……と泰葉は言葉に詰まった。蔵人にとっては慣れっこの反応だ。おそらく彼女は自分の読者ではない。だが「知らない」というのが失礼だと思って、なんとか次の言葉を探しているのだ。「どんな御本を?」というのが、つづく反応としては一番オーソドックスなものである。
ところがその予想は覆された。
「間違っていたらすいません……ねこでんのフリーペーパーに何度か、エッセイを載せていませんでした?」
「ええっ!」
蔵人は仰天する。確かに彼は以前、ねこでんこと寝子島電鉄に依頼され、季節イベント用の小冊子に小さなエッセイを寄稿したことがある。といっても一回2000文字程度の小さな内容であったし、わずか三回のことだった。そもそも蔵人自身が、書いた内容をすっかり忘れてしまっていたくらいだ。
「良かった。とても面白い内容だったから、お名前も覚えていたんです」
「光栄だなあ……いままであのエッセイでは、一度も反応をもらったことがなかったから……」
蔵人の目は見開かれたままだった。まるで生き別れのきょうだいに巡り会ったような気分だ。
「海辺の路線を歩いた話、たしかそれが最初でしたよね?」
泰葉は細かく内容について触れた。一節にいたっては諳んじてみせた。間違いない、蔵人の文体だ。
「そういえば、そんな話を書いた気がします。ええ、確かに書きましたとも」
蔵人は胸を熱くした。読み飛ばされてしまうような小冊子の片隅の、あんな小さな文章が、うら若い女性に読まれて愛されていただなんて!
「好きでした。あのエッセイ」
ただのlikeという意味での『好き』だろうけれど、泰葉の唇から紡がれるだけで、それはとてつもなく色っぽい言葉に聞こえる。
感極まって、という様子で泰葉は言った。
「嬉しいです、あの書き手さんにお目にかかれるなんて。南戸河先生とお呼びすればいいですね?」
「いやあ、そんな大層なものでは!」
乾杯して話し始めると、ますます彼女への蔵人の印象は良くなった。
たしかに泰葉は、蔵人のメインである作家活動については知らなかった。けれども熱心に彼の話を聞いてくれた。
「そうですか、若い読者が中心なんですね?」
「うん、絵本とか童話、あとは少年向け小説がメインで……他にもちょこちょこと」
「小学生が夏休みの読書感想文のテーマに選んだりするような?」
「はは、何度かは……あると思います。でもまあ『あると思う』って程度で、文科省推薦をもらって課題図書にされるほど立派なもんじゃないし。そんなに売れてるわけじゃないけど……」
「そんなことないです」
と告げた泰葉は、それまでよりもずっと、蔵人の近くに移動していた。膝と膝が触れあっている。触れている部分がやわらかく、熱い。
「知的な職業の人って……格好いいです」
泰葉は、甘い匂いがした。
「ま、まあ……おかげさまでこういうところ来て遊べる程度にはね」
これはキャバ嬢らしい営業に違いない。でなきゃこんな魅力的な女性が私なんかに――と蔵人は己に言い聞かせようとするのだが、彼女が自分のエッセイを読んで覚えていてくれたこと、しかも好きだと言ってくれたことは間違いなく事実ではないか。
――悪い気はしない。いやもうはっきり言うが……最高だ!
喉が渇いていた。蔵人はぐっとグラスを干す。安い焼酎の水割りだが、家で一人で飲むより百倍は美味しかった。
「私、南戸河先生のファンです。いえ、エッセイを読んだだけなんでファンというのはおこがましいですけれど……明日、休みなんでさっそく先生の本を買いますね!」
「読んでくれるんなら家にあるやつを持ってくるから……」
「そんなの駄目ですよ。ちゃんと買いますから、今度サインして下さいね」
「うん、じゃあ、また今度!」
時間となった。手を振って離れる泰葉の背を目で追いながら、なんか自動的にまた来ることにされてしまった――と蔵人は気がついたのである。
でもいい! それでも、いい!
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
恋愛
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2016年06月05日
参加申し込みの期限
2016年06月12日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年06月12日 11時00分
参加キャラクター一覧
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