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回向亭茶話 ~三世を渡る
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浅葱 あやめ
がふと我に返ったのは、余りにも懐かしい光景が目に入った時だった。
やや傾いた陽。朱く照らされる空。
西日の差し込む廊下で、彼女は行きかう生徒たちの中、立っていた。
――違和感が、あやめを包む。
一歩無意識に踏み出した足が、さらなる違和感を呼び、異なる重心に、バランスを崩す。
両の手で抱えていた数十冊近い帳面の束が、その拍子に床へと散らばっていた。
女の、子?
己の身体の変化に、そこではじめて気づく。そして惚けていたことにも気づき、慌てて彼女はしゃがみこんだ。そう、自分はこのノートを職員室にいる教師の下へもっていかなければならないのだろうから――拾い集める少女の視界へ、不意に懐かしい手が忍び入る。
「大丈夫?」
目線を上げれば、――あの頃のままの、祥汰がいる。
「あ、うん、ありがとう。……あ」
手を取り、礼を言い、そして己が声に驚き、小さく声が出た。
「ったく、また転んでんなよ。前髪長くして下ばっか見てるから、前を見忘れるんだっつの――なんか、急ぎか?」
ぐ、と力強く引き起こされ立たされた己の身体は、やはり細く、軽い。
声もその華奢な身体に相応した、やや高めの思春期の少女らしい声。
これが、僕が望む世界――僕の、望む自分。
微かに宿る本来のあやめの感情が、そうひとりごちた。
ああ、そうか。僕はこれが、この状態の、何もおかしなところのない僕が、見たかったのか。
なんとなしに納得はしたもの戸惑いはまだ尾を引き、目前の幼馴染――祥汰の問いに、答えられない。
そんなあやめに、勝手に何がしかで納得したのだろう。
ひょい、といとも気軽に彼はあやめの手からノートのほとんどを取り上げた。
「持つから、ほらしゃっきりしろよ!」
あやめが怪しい足取りで運んでいたノートの束を軽々と片手で持ちながら、残った手で優しく、あやめの背をたたく。
たたかれた背中から、じん、とぬくもりが全身に波及し、血液が数度あがり、心臓が早鐘を打ち始める。
少し大きな歩幅であるく祥汰。
そんな彼の横で、体に見合った小さな歩幅でしか歩くことのできないあやめは、その歩調に頑張って追いつかなければならない。
それでも、祥汰と並んで歩くこの時間。それが、彼が見たかった世界だった。
少し歩いたころ、不意に祥汰の歩調が緩む。
焦り気味に歩くあやめの様子に気付いたからだろう。
そんな優しさが、好きだった。
そっと顔を赤らめながら、廊下を並んで歩く。どうしても下を向いてしまうあやめとは違い、横の少年は、すれ違う学生や教師と、何らかの言葉のやりとりを交わしていく。
「……どうした?」
うつむいたまま歩いているばかりのあやめ。そのもやもやとした心を見透かしたかのように、声がかかる。
「なんでも、ない」
苦笑しながら、返すあやめ。そうしているうちに、二人は目的地である職員室へとたどり着いた。
開く扉、先行する祥汰。その背中を追うように一歩を踏み出したあやめは、扉をくぐった瞬間、息をのみ、足を止めた。
「――おう、おかえりんさい」
ちょうど珈琲を入れ終わったところじゃよ。
そういう禿頭の老人の笑顔に、あやめは理解した。
夢の時は、終わったのだと。
味わう珈琲は、温かく、しかし苦い。
あの姿なら。幼馴染である少年の横にいて、何らの違和感もなくあれた――いや、僕らしく何もできていなかったですけど。
そこまでは都合よくならないか、と苦笑しながら内心で呟いたあやめ。
臆病で、後ろ向きで、自分の一挙手一投足から、何かが漏れ出たらどうしよう。そう思うと、何の行動もできなかった、あの頃。そして、今。
そうだね、とあやめは肯く。見ることができたからこそ、思い知る。女性になりたいわけではないのだ。
ただ、人から認められる在り様でありたい。
人として、男として、どうあるべきか。
元より「男性らしさ」が少なかった彼に、彼の祖父が幼いころから叩き込んできた教えは、成長してもなおあやめ自身をとらえる枷の一つとなっていた。それだけならば、いずれなんとかなったかもしれない。けれども枷は現状をゆがめ、ゆがんだ現状は新たな枷を生む。
気づけば、「いま」に揺蕩い、「ふつう」の男であることができない自分を持て余していた。
「味はどうだね」
カウンター越しに、ただ黙々と珈琲を飲み続けるあやめへと声がかかる。
「あ、ええ――ほろ苦くて、でも、ちょうどよいようです」
「そりゃあよかった」
ひょっひょっと人を食ったような笑い声をあげ、老爺がうなずく。
「それくらい苦いとな、フツウの人はまずくて嫌がる。わしも飲まん。だが、お前さんはそれくらいがいいかと思っての」
その言葉に、あやめは顔を上げる。
「ほ、ようやくこっちを見たわい――冗談じゃ、実はちぃと長く蒸らしすぎての。いやはや、失敗作かと思ったが都合よく美味しいらしくて助かったわい」
ひゃっひゃ。
また小さく笑い声をあげ、老人はとりかかり始めていた食器洗いに再び挑み始める。
鼻歌を歌うその姿に何か声をかけるのも躊躇われ、あやめは残った珈琲を飲み干すべく、カップに手を伸ばすのだった。
「――苦いな」
確かに、「ふつう」の珈琲ではない。
それでも、自分には美味しく感じられる。
そのことが、何故かあやめの胸に、少しだけ、小さな収まりどころを作ってくれたような気がした。
最後の一口を、口へと運ぶ。
「でも、美味しいんですよね……」
小さなあやめの呟きは、老人の鼻歌が響く店の空気に、ひそかに溶けて消えていく。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
蒼李月
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
SF・ファンタジー
神話・伝説
定員
15人
参加キャラクター数
12人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2016年05月30日
参加申し込みの期限
2016年06月06日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年06月06日 11時00分
参加キャラクター一覧
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