【星幽塔】酒場にて　→飲む　→話す　→外に出る　→脱ぐ｜リアクション

【星幽塔】酒場にて　→飲む　→話す　→外に出る　→脱ぐ

　討伐隊の戻らぬサジタリオの空はまだまだ暗い。そんな中、巫部紫苑は畳んだ日傘を片手に、のんびりと城下町を歩いていた。

「なんだか不思議な場所ですけど……とりあえず、どんな食べ物や料理があるのか気になりますね」
　明らかに寝子島とは、いやそもそも現代とは違う中世風の街並を歩きながらも、紫苑はとりわけ動じることもなかった。それどころか目の前に広がる見知らぬ食べ物のお店や屋台に興味津々。
（この世界にはどんな美味しい物があるのかしら？）
と、目に付いた食事処や屋台全てに立ち寄っていった。
　―――え？　『全て』は言い過ぎだって？
　いや、『全て』である。さらに言わせて貰えば、そのお店のメニューを全て頼んでペロリと平らげ、次に向かうという徹底ぶり。「全部食う？　無理無理お嬢さん」と言う店主達の顔を、次々と呆然とさせていくのだった。

　紫苑の興味は料理された物だけではない。屋台に山盛りに積まれている見慣れない果実も、彼女をあちこちで誘ってくる。勿論紫苑はその誘惑を断ることなく、パクリパクリと丁寧に彼らを味わっていく。
　これで何種類目の果実であろう。西洋梨によく似た甘い果実を上品に囓っていた紫苑は、ふとその最後の１口になった物を見る。そして考えた。
（これ、＜癒しの光＞でまた元通りになったりしないかしら……？）
　そう、彼女の日傘には星の力＜癒しの光＞が宿っている。この力で９割方食べてしまった物をまた元に戻せないか考えたのだ。
　紫苑は日傘でそっと果物に触れてみる。パアッと白い光が広がって果物は……食べかけのままだった。
「まあ、出来る訳ないですよねー」
　紫苑は１人ふふと微笑みながら、その最後の１口を自分の胃袋に収めた。……異世界は彼女の腹の中かもしれない。

「美味しかったけど歩き疲れましたね。この世界のお風呂も気になりますし……最後に汗でも流しましょうか」
　ようやく満足したのか、単にほとんどの店を食べ尽くしたからなのか、とにかく紫苑は一通り食べ歩きを終え、公衆浴場に立ち寄ることにした。しっとりと汗ばんだ豊満な胸元を大胆にはだけさせ、風を入れる紫苑。ちらりと胸元に繊細なレースが覗き、道行く男性の喉がゴクリと動いていたが、紫苑は全く気が付かない。
（……お風呂から上がったらまた少し何か食べてもいいですね）
なんてのんびりと思いながら浴場に向かうのだった。