【星幽塔】酒場にて　→飲む　→話す　→外に出る　→脱ぐ｜リアクション

【星幽塔】酒場にて　→飲む　→話す　→外に出る　→脱ぐ

「すっごいなここ……！」
　志波武道は街の様子を目の当たりにして、感嘆せずにはいられなかった。
　塔の中でありながら、城下町は思った以上に広く、賑わっている。
　塔の中と思うからいけないのだろうか。塔の中の、一階層でありながら、ここはひとつの『世界』なのだ。
　しかし空はいまだ黒く立ち込め、街のランドマークであろうサジタリオ城は、不穏な気配に包まれている。
「あの城を攻略しなきゃここの街の人達のフツウは……ちょっと緊張してきたな」
　武道はごくりと生唾を飲み込み、改めて自らを観察してみた。左上腕に、闘士の光が宿る腕輪が嵌っているほかは、武器になりそうなものは持っていない。これから戦いに行こうというのにこれだけでは心もとないように思われた。丸腰というのはさすがに怖い。
「力は強くなってるみたいだけど、一応身を守るためのナニカをさがしてみるか……って、こ！　これは！」
　その店には、剣と盾の看板が掛かっていた。
　店先にも様々な武器が並んでいる。それもゲームで見るような武器だ。
「こんにちはー！」
　武道は店の奥に声をかける。すると奥から、頭にバンダナを巻いた渋いおやじが現れた。
「おう。ここは武器屋だ。お客さんかい？」
「すげー！　いかにもＲＰＧに出てくるような武器屋のおやじだ！！」
　そう。二の腕は筋骨隆々、白のシャツに皮のベストを着こなした、いかにもな武器屋のおやじである。眉と眉の間に刻まれた皺。古傷が、昔は腕の立つ男だったことを匂わせている。
「で、用は？　どんなのを探してる？」
　オヤジはキラキラした目でこちらを見ている武道を訝しむように見ながら訊いた。
「そうだった。つい感動しちゃったテヘペロ☆　えーっと、俺に合う武器が欲しいんだよなー……刃物のような扱い誤ったら怪我するのじゃなくて、防御にも使えて……」
「ふむ」
　頷いたオヤジに、武道はポツリ。
「多分、実際の戦いになったら俺は、ろっこんで無力化するのが精いっぱいだとおもうしな……」
「ろっこん？」
「あ、何でもないです！　ハイ！」
　今その話をオヤジにしても始まらないだろう。刃物以外、という条件はオヤジに伝わったらしく、この辺見てみたらどうだい、と打撃系の武器がおいてある一角を勧められる。
「これは重い、これはちょっとデカイ……ひのきのぼう？　さすがにこれはなあ……」
　などと選んでいると、ふと壁に、握りのついた二本組の棒状武器が掛かっているのが目に留まる。
「トンファーか」
　手に取ってみると、妙に手になじむ。構えてみるとまたよくて、なにやら闘志が湧いてくる。
「コレダ！　コレください！　ついでに装着できるベルトみたいなのもあればください！」
「あいよ、まいど！」
　値段を言われて気づく。武道はこの世界の貨幣を持ち合わせていない。しかし、多様な人々が集まる街だからであろうか、そのあたりは寛容らしく、オヤジは物々交換でも構わないと言ってくれた。
「うーん、コレとか大丈夫かな？」
　武道は身に着けていた腕時計を差し出す。オヤジはルーペを取り出し腕時計をまじまじと見た。
「ほう、こんなに小さい物は珍しい。空き屋を買うくらいなら釣りが来るぜ……しかし、俺の武器は１点物。少々足らんなあ」
　これには武道も少し焦る。トンファーは是が非でもほしいのだ。
「エーット、足りなかったら客寄せなりなんなり手伝います！」
「よし。ならしっかり手伝ってもらうぞ！」

　交渉成立、武器ゲットである。

このページにイラストを設定する