【かるた】わんだふる・ゑきさいてぃんぐ・かるた大会｜リアクション

【かるた】わんだふる・ゑきさいてぃんぐ・かるた大会

　読み手を務める旅鴉月詠が、純白の袖をなびかせてマイクの前に立った。

　難波津に　咲くやこの花　冬ごもり……

　月詠の読み上げる様は、さながら祝詞を捧げるよう。あるいは、選手たちに神聖な言葉を下しているかのようだ。会場のすみずみまで聞こえるよう、声量を十分に、朗々と―――それでいて、聞き取りやすく。
（聞き惚れるあまり、札を取り逃すなよ？）
　
　札が散って、並べ直したのを確認してから次の歌へ。淡々としながらも、本人もちょっと陶酔気味だ。
（間違った札を取ったりしたのに気づいて慌てても、試合は構わず進む……動揺は敗北の兆し、ふふふ）

　みかきもり　衛士のたく火の　夜は燃え　昼はきへつつ　ものをこそ思へ

　チームリーダーの海原茂の反応は早かった。昨年優勝の実力は伊達ではない。
「さすがは元会長ですねー。こっちをじっと見てきて、イヤラシイ！」
「そういう視線ではない！」
　屋敷野梢に茶々を入れられながらも、茂は順調に札をとっていく。
　劣勢を感じた回田はつなは深呼吸をした。焦ると何もできなくなってしまうので、一度気持ちをリセットさせる。自分の受け持ちの歌は暗記してきたし、他の歌も目を通しておいた。札の場所はかなり正確に覚えているが、速度で中々勝てない。
「取れる札を、落ち着いて取る！正確さに、少しでもスピードを足さないと」
　深呼吸のおかげで、気持ちが落ち着いてきた。余裕を持った微笑を浮かべて、はつなは普段通りに笑う。
「うひ～」
　苦しい展開の中で出てきた笑顔に、相手チームは少なからず困惑した。焦らず、笑顔を忘れない本来のはつなのペースに、少しずつ引き込まれているようだ。
「そうそう、沼は底がしれないものだよ～。綺麗な花だって咲くんだから！」

　寂しさに　宿を立ち出でて　眺むれば　いづこも同じ　秋の夕暮れ

　大事な一字決まりが出た。梢は手元に置いてあった札をしっかりと押さえた。
　札の並べ方は、一字決まりと二字決まりを自分の近くに配置。特に一字決まりは、覚えた人同士ですぐ手を出せる位置に置いておく。五十音順など、規則性は無視だ。
　相手チームは、茂が司令塔で満が知識を活かしてくるタイプと見た。それに加え、梢の正面にいる北風貴子が積極的に敵陣に手を出して攻めてくる。ならば攪乱作戦だ。

　この度は　幣も取り敢へず　手向山　紅葉の錦　神のまにまに

　担当の歌ではなかったが、梢は身を前に乗り出し、貴子の視界に適当に手を出した。貴子がフェイントをかけられている間に、はつなが札を取った。
「くっ……」
「作戦、はまりましたねー！」
　悔しがる貴子を尻目に、梢はさらに相手を攪乱できるよう、敵陣の札もどんどん覚えていく。