【かるた】わんだふる・ゑきさいてぃんぐ・かるた大会｜リアクション

【かるた】わんだふる・ゑきさいてぃんぐ・かるた大会

「相手が、去年優勝の海原先輩方とは……」
　裏方で楽をするつもりだったのに、先生に言われて参加する羽目になった屋敷野梢。チーム名の「沼」とは、先生に指名された時の心境を表しているのだとか。
「相手は3年の先輩たちで、しかも去年の優勝チーム？うひ～、緊張するなぁ……」
　そう言いながらも、回田はつなの口調はいつもどおりのんびりしている。対照的に、その傍らでは丁香花リラが不敵な笑みを浮かべていた。
「優勝チームとの戦い……不本意ながら、楽しみでございます。これぞ共同作業……まるでケーキ入刀でございますね」
　最上級生に挑む1年生たちだったが、実は梢の発案した秘策がある。
「海原先輩の弱点は間違いなく色気だし、日野先輩は猫騙しみたいなのが効きそーですが……ここは弱点を突いたりするのはやめますかー」

「沼」チームの3人は、それぞれ別の歌を36首ずつ暗記している。合計は108枚で、重なっている8枚は、重要な１字決まりの歌７首と、２字決まりの歌を１首。
　それ以外の札も目は通してあるが、取れるものだけを確実に取る作戦である。
「作戦は屋敷野様の仰る通りで異存はございません。相手が強力ならば、尚更確実性と汎用性が求められることでしょう」
　試合前の最後の打ち合わせで、リラがコメントした。
「爆発力がない分、優勝は遠のくかもしれませんが。私の目的は、もとよりゲームを楽しむことでございます故……」
　そんなチームメイトの姿を見て、はつなは少しリラックスできたようだ。
「梢ちゃんとリラちゃんが堂々としてるから、すっごく心強くて救われるよ～。きっと大丈夫、自信持とう！私も私のベストを尽くすよ～」

　試合前、「沼」チームは対戦相手のリーダーズチームと対面し、一礼した。リーダーズチームは海原茂、北風貴子、日野満の３年生チームだ。
「百人一首に興味があるかと言われますと、そのようなことを考えたこともございませんでした。突如副会長様に拉致され、大変楽しませていただきました……失礼、まだ試合は始まっておりませんでした」
　リラの台詞は通常通りに人を食っている。
「元生徒会長の俺が、現生徒副会長の屋敷野と当たるとはね……本気で行かせてもらうよ」
　茂の言った言葉に、梢も負けじと返す。
「先輩方の最後のかるた大会で……もはや運命的な何かですよ！先輩方が、後輩に安心して後を任せて卒業できるよう、正面から叩き潰しますよー！」