【かるた】わんだふる・ゑきさいてぃんぐ・かるた大会｜リアクション

【かるた】わんだふる・ゑきさいてぃんぐ・かるた大会

「えーと、次のメンバーは……」
　実況で忙しく、そろそろ疲れてきた宇佐見望月。次にマイクを向ける相手を探していると―――
「チームの勝利のためなのだ、真央ちゃん頑張るのだっ！」
　賑やかな声が耳に入ってきて、望月の心臓は急に高鳴った。
「やべぇ真央ちゃんがいる！うわーどうしよ、普通に対応できっかな俺……」
　後木真央のことは、どう頑張っても意識せざるをえない望月だった。

「いっ、意気込みを教えてくだひゃい！」
　案の定、望月は噛んだ。
「真央ちゃんは今日のために、修ちゃんからかるたの取り方聞いて、時間の許す限り練習も手伝ってもらったのだ！でもやべぇのだ、他の練習が厳しすぎてむすめふさほせ以外脳みそに入らなかったのだ……」
　真央の気合は、ジャージ姿と血走った目からも伝わった。
　続いてコメントしたのは、探検部チームの龍目豪である。
「かるたなんて柄じゃないと感じてたけど、八神に誘われてやる気になったんだ。同じクラスの八重崎が、かるたで頑張ってるのは知ってた。俺には無縁の世界だと思ってたが、試合を見てたら熱くなってきたぜ！」
　豪も事前にチームで練習を積んできたし、実際の試合を見てイメージをふくらませている。
「歌留多同好会だから、暗記は完璧だ。決まり字や札の並べ方まで、事前に特訓してある」
　八神修の口調は静かながら自信に満ちていた。3人の真ん中に陣取ってチームをまとめる。「男のほうが手が長いし、相手への威圧感もあるかも」という豪の意見もあり、一番身長のある修が真ん中に決まったのだ。

　選手全員のコメントをもらい、第４試合前の望月の仕事は終わった。
「ま、真央ちゃん……！」
「もっちゃんセンパイ……？どうしたのだ？」
　何か、言葉を言うんだ……そう、この試合が終わったらとかなんとか……。
「し……試合、頑張ってな！」
　望月の口からは、それが精一杯だった。不甲斐ない自分にがっかりしつつ、ポケットにある飴を渡す。
「ありがとなのだー！」
　手を振ってかけていく真央の後ろ姿を、望月はうなだれながら眺めた―――と、その時。再び、彼の携帯電話が鳴った。
「なんだよいーな、いちいち電話してくるなって……」
「こら叔父貴！必要以上の応援はやめんか！贔屓になるじゃろうがっ！」
「してないしてない、公私混同なんてしてないよぉー！」

「全く、叔父貴にも困ったものよ……」
　放送席にいる大田原いいなは、愚痴を言いながら双眼鏡から目を外した。
「どうした五郎八殿……え？儂、今邪魔しとった？」