【かるた】わんだふる・ゑきさいてぃんぐ・かるた大会｜リアクション

【かるた】わんだふる・ゑきさいてぃんぐ・かるた大会

「必殺技は使えませんが……これならどうです！大人のかるた大会を見て研究した予想術！」
　今まで読まれた歌のパターンから、次の歌を予想するのだ。神々ノ黄昏の最終兵器だ。
「特訓を重ねた私ならできる……はずでございます！いや、できる！でございます！」
　神々ノ黄昏は集中力を研ぎ澄ませる。
「さあ、勝ちに行くでございますですよ緑里お姉さま！ ……乙女お姉さま、鏡は没収でございますよ！」
　髪型の乱れを直そうとしていた戦乙女は、不満気に答える。
「ロコちゃんの持ってるそれはいいの？」
　神々ノ黄昏は慌てて、ぬいぐるみのフェンリルちゃんを抱き寄せた。
「ふぇ、フェンリルちゃんは私の相棒なので大丈夫でございます！」

　君がため　惜しからざりし　命さへ　長くもがなと　思ひけるかな

　次の歌は、ゆきのの好きな、男性による恋の歌だった。
　あなたのためならば惜しくはなかった命ですが、死期が迫った今は少しでも生きながらえたいものです―――という儚い恋の歌を、ゆきのは勝手にきれいなお兄さん同士の情景に変換して覚えている。
（きれいなお兄さんの思い……いい歌ね……）
　つい妄想にふけっていたら、相手に取られてしまった。
「そんな……」
　ゆきのは悔しさでつい熱くなり、妄想がさらに膨らんでいく。
「ゆきのの……取らないで……お兄さんたちの邪魔しないで……」
　きれいなお兄さんたちを守らなきゃ……ゆきのに何かのスイッチが入る。

　かくとだに　えやは伊吹の　さしも草　さしも知らじな　燃ゆる思ひを

　ゆきのの手が、がっちりと札を押さえた。
「すげー、ゆきの！」
「さっきから連続でゆきのが取ってる……」
　あんずとアカリが、ゆきのの活躍に驚いている。

　君がため　春の野に出でて　若菜つむ　我が衣手に　雪はふりつつ

　ゆきのが力強く最後の札を払い、試合終了。ゆきのによるラストスパートのおかげで、子守チームが7枚差で勝利した。

「次の歌の予想は不発でした……」
　肩を落とす神々ノ黄昏と戦乙女に、緑里はそっと手を差し伸べた。
「トメちゃんもロコちゃんも、ちょっと負けず嫌いなところがあるけど、みどりんは2人と大会に出られたことの方が嬉しいんだぁ！」
　緑里はお姉さんのような笑顔を浮かべ、チームメイトの2人の肩に手を回した。

「アカリー！うちのおかげで勝てたんだから帰りにお菓子買ってー！」
「お前のおかげじゃないだろ」
　騒ぐあんずに、アカリは思わず突っ込んだ。
「でも……こんなんでも、勝てたらやっぱ嬉しいもんだな」
　大人気ないし、顔には出さないが。

「この歌に……それにこれも」
　ゆきのは畳に座ったまま、使い終わった札の中からお気に入りの歌を並べてご満悦だ。
「……恋愛成就？」
　彼女がどんなことを考えているのかは、誰も知らない。