【かるた】わんだふる・ゑきさいてぃんぐ・かるた大会｜リアクション

【かるた】わんだふる・ゑきさいてぃんぐ・かるた大会

　難波津に　咲くやこの花　冬ごもり……

　静かに、しかし熱気を持って第４試合目が始まった。
「“む”の寂蓮、“す”の藤原敏行、“め”の紫式部、“ふ”の文屋康秀、“さ”の良暹、“ほ”の後徳大寺左大臣、“せ”の崇徳院……これだけは絶対取るのだ！」
　後木真央の武器は、何といっても体育科らしい肉弾戦だ。動体視力と全身のばねを使って相手陣を攻めていく。

　吹くからに　秋の草木の　しをるれば　むべ山風を　嵐といふらむ

　敵陣にあった札が、真っ直ぐに抜かれた。他の札を散らしたりしないような正確さも追求し、猫鳴館の自室に札を並べて突き手や払い手を練習してきた成果だ。

「相手チームはバランス重視だねぇ」
　真央の前に陣取る壬生由貴奈が、探検部チームの傾向を分析する。
「運に賭けつつ、スピードタイプの裏をかいていきたいねぇ。一字決まりは諦めるしかなさそうだけど……」

　記憶力に自信のある八神修は、札の並べ方を工夫した。下の句の3文字目を「いろは順」に並べれば、まず規則性には気づかれない。自陣の札の位置が明確にわかっているので、相手陣の記憶に注力できる。

　夕されば　門田の稲葉　おとづれて　蘆のまろやに　秋風ぞ吹く

　もちろん、同好会としてのスピードも兼ね備えている。札を払いにいく手つきは全力だ。

　夏の夜は　まだ宵ながら　明けぬるを　雲のいづこに　月宿るらむ

　演劇部チームも負けてはいない。続いて読まれた歌を守りきったのは西川夕莉だ。
「普段から、劇の台詞を覚えるのは苦手じゃないし、記憶力も悪くないと思う」
　夕莉の記憶術は、語呂合わせだ。四季の歌を中心に、上の句の単語と下の句の単語を関連付けて覚える。ざっと自分の前に並べた札をチェックして、狙い札がなければ相手陣から探す。お手つきが怖いので、慎重に。

　かくとだに　えやはいぶきの　さしも草　さしも知らじな　燃ゆる思ひを

　これも覚えていたので、確実に敵陣を押さえる。和歌では掛詞や縁語が多用されるので、語呂合わせ暗記法との相性は良い。だが、この歌を覚えていた理由はそれだけではない。
「この歌、キャンディボックスの作品に近いような気がして……」
　夕莉の大好きな劇団のイメージと重なっているらしい。

「うりゅが確実に狙うのは、女性が詠んだ21首！」
　雨龍雛はそう言って、最初に札を並べるとき、女性の歌を自分の近くに置いている。人の名前と、読み札に描かれた服の色合いを頭に入れる。あとは勘任せだが―――
「勝っても負けても、優雅な御姫様であるように、だよ！」