【かるた】わんだふる・ゑきさいてぃんぐ・かるた大会｜リアクション

【かるた】わんだふる・ゑきさいてぃんぐ・かるた大会

　第４試合の出場選手がアナウンスされると同時に、観客席がどよめいた。
　観客の視線の先は、演劇部チーム3人の衣装に向いている。それぞれが、きらびやかな平安装束を身にまとっていた。
「これで気分は平安時代の御姫様！のはず！」
　市女笠を傾け、雨龍雛が顔をのぞかせた。鮮やかな紅色の壺装束で、長い黒髪のウィッグまでつけている。この格好は、演劇部として、取材などでアピールするために雛が出したアイデアだ。壺装束は女性の外出着なのだが、十二単などを着てしまうと動きにくいと思い、却下した。
　その横で、うぐいす色の男性の装束を身にまとっているのが西川夕莉だ。
「演劇部として―――ただ勝つんじゃなく、観客を魅せながら勝ちたいの」
　夕莉自作の衣装は、狩衣と呼ばれる。全身運動は大変そうだが、主に上半身のみを動かすかるたなら問題はない。男性の衣装なので、勇ましさをイメージしている。
「ふっふっふー。どーお、この衣装？」
　壬生由貴奈が、広い袖を優雅にひらめかせた。由貴奈の服装も男性のものである。頭にかぶる烏帽子もセットだ。夕莉の狩衣と似ているが、少し形状が違う水干という装束である。
　観客からの注目は、これまでで一番だ。
「試合前のインパクトは抜群っと。あとは、本命の百人一首を頑張ろー！」
　目論見通りといった風情で、由貴奈はほくそ笑んだ。

「綺麗な衣装です！さすが演劇部ですね！」
　椿美咲紀は、新聞部の腕章をつけて駆け回っていた。手にはデジカメとICレコーダー。新聞部の突撃インタビュー担当として、このビッグイベントは見過ごせない。トップニュースにして、大会の興奮を伝えるのだ。
　試合前に、各選手のコメントを聞き、写真を撮る。特に、試合中はフラッシュが使えないので、チーム紹介用の写真は試合前に撮っておく。
「試合前の目の輝きで、チームの勢いがわかろうというもの」
　演劇部の出で立ちは、特に意気込みが伝わってくる。美咲紀は、さっそく演劇部チームの一員、壬生由貴奈にマイクを向けた。
「この衣装、どなたの提案なんですか？」
「うりゅちゃんからの提案だよぉ。それっぽい着物ないかなーって思って、うちは水干にしてみたんだよぉ」
「西川さんと同じ男装ですね！二人とも背が高いので映えます」
「うふふ、ありがと。ゆーりちゃんの狩衣と似てるけど、うちのは少し違うのがミソ。ほら、蹴鞠とか上手そうじゃん？」
　インタビューの後、写真撮影をお願いする。このチームについては特に、写真を忘れてはいけない。