【かるた】わんだふる・ゑきさいてぃんぐ・かるた大会｜リアクション

【かるた】わんだふる・ゑきさいてぃんぐ・かるた大会

　まもなく、第３試合が開始される。「ヴァルハラ3人娘」チームと「子守」チームが、試合を前に対面した。
「対戦相手にもちっちゃい子がいるんだねぇ。うきゃー、可愛い！」
　あんずとゆきのを見た八城緑里は嬉しそうだ。

　試合に臨む加藤神々ノ黄昏は、今までの努力を思い返していた。
「勝つための練習はしてきましたのです。3人で特訓した日々……百首を全て覚え、互いに上の句を出題し合って答え、どうすれば札を早く取れるか研究し……」
　神々ノ黄昏の脳裏に浮かぶ、特訓の情景……。
「思い出せば思い出すほど、乙女お姉さまは鏡の前でクネクネしてたばかりでございます！？我ながら不甲斐ない姉でございます……」
　隣にいる姉は、確実に頼りにならない。小４にして、不憫な妹であった。
「罰として大会でのダメっぷりをお母さまにチクるでございます。あとは、私と緑里お姉さまで何とかするしかないのでございますっ！」

「お前ら大人しくしてろよ頼むからさ……」
　一方の子守チーム。真ん中に座るアカリは気が気でない。

　かささぎの　渡せる橋に　おく霜の　白きを見れば　夜ぞ更けにける

「これだ！」
　あんずが、覚えたばかりの札をもぎ取った。
「ゆきのー！見て見て一枚とれたー！」
「あんず……一枚で油断しないで……」
　大喜びのあんずに、ゆきのは淡々と答える。言葉の真意は、「油断しないで最後まで頑張ろうね」であって悪意はない。あんずにはフィーリングで伝わっているので問題はないが。

　いにしへの　奈良のみやこの　八重桜　けふ九重に　にほひぬるかな

　自分のお気に入りの歌が読まれ、アカリは素早く反応した。
「やった」
　思わず、喜びがこぼれる。
「八重桜が宮中、つまり九重に咲き誇る、ってところが好きなんだ。掛詞とか、手法が巧みなのもいいよな」

　由良のとを　渡る船人　かぢを絶へ　……

「この歌知らないー！」
「……」
　両側の二人が止まったのを見て、アカリは業を煮やして言った。
「下の句は『行方も知らぬ　恋のみちかな』だ！もういいから全員で探せ！」
相手チームにとってはチャンスのはずだったが―――
「何もしなくてもちょー可愛いのが当たり前な乙女ちゃんだけど、もっと可愛くなるにこしたことはないからね！」
　加藤戦乙女は札そっちのけで、自身の可愛さを誇るように言った。もちろん、影で努力していることは秘密だ。だって、可愛くないから。