文房具戦争、勃発！？｜リアクション

文房具戦争、勃発！？

●●●剣士の激突！　瞬速の刃と深紅の刃●●●

　先の戦いで分断された刀は隙を見て『豆腐』のフラッグを目指していた。
　刀としては敵はなぎ倒していく方針ではあった。
　しかし、チームとしては誰かが囮になっている間にフラッグを狙う作戦を採用した。

「こっちか。守っている猫は…いないか？」

　発見した『トウフ』のフラッグは白く輝きながら学校の2階程度の高さのところに浮いていた。
　普段なら建物から飛ぶのが有効だが、この世界では飛んでも十分届く距離であった。
　周囲を警戒し、先ほどの猫やキノコチームの存在を探るが、刀は大丈夫だと判断した。
　制服のズボンに皺を作り、フラッグと同じ高さまで飛び、そこで違和感を覚える。
　『トウフ』のフラッグを獲得した直後にろっこん【加速】を使い、仕込み傘を違和感に対して振るう。

「っ！」

　結果からいうと、当たりである。
　刃を抜かぬ仕込み傘で潜んでいた敵からの攻撃を防ぐことができた。
　しかし、それは今までの経験からくる幸運と言って良く、2度目を期待するのは難しい代物だ。

「流石だな、御剣。結構自信あったんだけど」
「俺も驚いたよ、デイジーカッター。今のは勘としか言えないからな」

　着地した両者はゆっくりと間合いの攻防をしながら言葉を交わす。
　潜んでいた敵はサキリであった。手に持つのはカッターを変化させたスペツナズナイフである。
　射出はできないが、サキリになじむように調整しており、両手で遊ばせる。

　サキリは刀と敵同士になってから、この展開を望んでいた。
　同じ剣士として、様々な事件を解決してきた刀と一度本気で手合わせをしてみたいと思っていた。
　この世界はサキリのそんな望みにちょうどよいとも言えた。

　対して刀はまっすぐにキノコチームのフラッグを取りに行きたいのが本音だ。
　とはいえ、作戦的には敵を引き付けているのは悪いことではない。
　そう頭を切り替えた刀は浅く、しかし、空気を肺に入れて機を狙う。

　間合いの攻防を破ったのは刀だった。
　焦れたわけでは無く、相手が厄介であるがゆえに自分のペースを作り出すのが肝要と考えたためである。
　始めは直線的にサキリへと向かい、仕込み傘の刃を抜き放つ。

「はぁっ！」

　刀の一閃をスペツナズナイフと全身を使って受け流すサキリ。
　余ったナイフで刀に攻撃をし、刀は意に介さずに躱すが、サキリの目論見通りであった。

　サキリは空間を切り裂くイメージを自らの中に構成し、ろっこん【斬空赤刃】を行使する。
　半径50m以内に瞬間移動ができるその能力はサキリによくなじみ、刀の背後に回るのも容易い事であった。
　そして、勢いをそのままに刀の背中へスペツナズナイフを振るう。

「そういうことか」

　サキリに届いた声はひどく冷静な言葉だった。
　そう認識した直後にナイフは刀の仕込み傘によって防がれる。
　刀のろっこん【加速】もまた、イメージを浮かべて発動するタイプのろっこんだ。
　刀のポテンシャルももちろんあるが、【加速】が上乗せされて、サキリのナイフに対抗する。

　サキリもその事態に考えがないわけではない。
　むしろ、そうしてくれなければ困るとまで考えている。
　ある程度連続使用が出来る【斬空赤刃】を行使し続け、縦横無尽に刀へとナイフを突き立てる。

　刀はナイフが来るたびに時に刃で、時に拳で、時に避け凌いで行く。
　サキリのナイフの先、目線、呼吸を見て感じる。
　加えて棒立ちの的にならないように常に動き続けることで凌ているのだ。
　もちろん、カウンターを入れるのも忘れはしない。

　そんなお互いの切り傷が増えていく状況を動かしたのはサキリだった。
　【斬空赤刃】で瞬間移動した直後、ナイフが赤く輝き、刀の心臓を穿つ。
　刀は相対するように超高速の居合を抜き放つ。
　かくして、深紅の刃と瞬速の刃は交わり、そしてそれがこの場の決着ともなったのであった。