雪暮れ湯けむり、冬の宿｜リアクション

雪暮れ湯けむり、冬の宿

● 枕、乱戦、華盛り

　さて、勉強会のほうはすっかり宴会からの大枕投げ大会に突入してしまったが、獅子目悠月と立花なつ、来島アカリの三人は別に部屋を取っていたので、キリのいいところで抜けて、部屋に戻っていた。
　食事の間に敷いてもらった布団はふかふか。真っ白なカバーが掛かっていて気持ちがいい。
　もちろん枕もふっかふか。
　悠月は満足そうにその抱き心地を確かめると、次の瞬間、アカリに向かって枕を投げる。
「枕投げの続きしようぜ。温泉では決着がつかなかったからな」
「ふわっ！」
　意表を突かれたアカリは、その枕を顔面から受けてしまう。
　あおむけに倒れ、一拍。ゆっくりと枕を顔面からはがしたアカリは、阿修羅の顔になっていた。
「ふーん……そっちがその気なら受けて立ってやろう、いくら許しを請っても止めねーからな！」
「望むところだ！」
　枕を悠月に投げつける。避けたところに、もう一つ！
　フェイントを受けた悠月はアカリの枕をまともに受ける。
「これで１体１！」
「……っ！」
　にやっと笑って、悠月は両手に枕を構えなおす。
　だが、この間にアカリは押し入れから予備の枕を取り出して陣営を固めている。
　ここからは乱打戦と言ってよかった。飛び交う、枕、枕、枕！
「わー、どっちも頑張れ～」
　再度勃発した悠月ＶＳアカリの戦いを、なつは楽しそうに観戦している。
　と、だんだんテンションが上がってきた悠月が、枕を抱えたまま、なつに向かってダイブしてきた。
「ここは戦場だぞ。そんな隙だらけでいいのか？」
　するとそれを見たアカリもなつにダイブ。
「そうだぞ、なつ！」
　三人は絡まり、枕だらけになり、大笑いしながらふかふかの布団に大の字になる。
　なつの右腕には悠月がいて、左腕にはアカリがいる。
「あはは～、俺ってば両手に華？」
　こうなってしまうと笑いが止まらなくなってきて。ふかふかの布団は気持ちいいし、互いの体温は気持ちいいし。少年たちのお布団はまるでハムスターの巣みたいな有様だ。そうして絡まった少年たち自身もゆっくり温もっていったころ、くすくす笑いは静かな寝息へと変わっていった。