無機質ワールドとオカシな戦士｜リアクション

無機質ワールドとオカシな戦士

【depachikaを目指す者】

　駅ビル『mushiki』は、革命団と警備隊との正面衝突で、上を下への大騒ぎになっていた。
　だからこそ、北原みゆきは今がチャンスだと思った。
（かつての島の繁栄を取り戻すためには、今あるお菓子だけじゃ到底たりない……）
　みゆきもまた島と町の無機質化を憂う少女の一人だった。
　彼女は革命団に属してこそいなかったが、想いは彼らと一つだった。
（……かつて、デパ地下と呼ばれた駅ビル地下の開かずの間にある封印された兵器がなければ町長は倒せない）
　みゆきは、ロストテクノロジーを使っていると言われる、デパ地下の武器を革命団に手渡すために、単身危険をおかして、駅ビル地下にやってきていたのであった。
　地下はやはり薄暗かった。
　みゆきは小さなペンライトの光を頼りに、そんな薄暗い地下通路を進んでいく。
「あっ、あったわ……！」
　そして、ついにみゆきはその扉を見つけた。
　背の高い、錆びついた観音開きの鉄扉には鉄の閂と南京錠により施錠されているが、どちらもすでに経年劣化で錠の体をなしていないように見える。
「あれなら、私でも開けられるかも……！」
　みゆきがそう思って、一歩近づこうとしたときだった。

「いたぞ。侵入者だ」
「リッカルド様のご命令だ」
「絶対に内部には入れるな」

　おびただしい数の足音がこちらに近づいて来るのがわかった。
（ふ、ふぇっ……！　ど、どうしよう……）
　みゆきは恐怖に錯乱するあまり泣きそうになる。
「……でも、逃げちゃダメ。逃げちゃダメよ、みゆき」
　みゆきは自分を鼓舞するように言うと、細長いソーダアイスバーの剣を構えた。
「相手は女の子一人だ」
「だが、オカシを持っているぞ」
「けしからん。没収だ」
　無機質警備隊が、無機質な表情のまま。無機質な銃を向けてくる。
「……っ」
　みゆきは緊張に息を詰まらせた。普通に考えて、剣と銃で、しかも一対三では分が悪すぎる。
　だが、そこでまた異変が起きた。
「ん？　なんだ、今何か気配が……うぐっ……」
「……っ！　ど、どうした！　しっかりしろっ……」
（え……？）
　みゆきは目を見開いた。
　ふと気づいたときには、こちらに銃を構えていたはずの警備隊の男の一人が口にマシュマロを突っ込まれた状態で気絶していた。まったくわけがわからない。
　警備隊の男は目を見開いて、恐れ戦いていた。
「な、なんだ……。これはどういうことだ……？」
「く……。おい、しっかりしろ……。ぐ……、やったのは誰だ？」
「――私はスイーツ・スイーパー。大丈夫、ご心配には及びません。あなた達もすぐに同じところへ送ってさしあげますから」

「「な……！？」」

　男達の後ろからふいに冷たい声が聞こえたかと思ったとき、声の主――常闇月はすでに完全な臨戦態勢に入っていた。