無機質ワールドとオカシな戦士｜リアクション

無機質ワールドとオカシな戦士

【炸裂☆グレネードもなか】

　澄佳ともなかはそんなアクション映画か時代劇の一幕のような事の一部始終を物陰から呆然と眺めていた。
（……先輩、世の中には凄い人がいるもんですねぇ）
（……うん。なまら強かったねぇ）
　思わず感嘆の吐息を漏らす。
　ともかく、これで放送室の守りが手薄になった。
　これなら自分達二人で占拠することも不可能ではないだろう。
（……澄佳先輩、作戦は最初の打ち合わせ通りでいいですね？）
（……うん、了解だよぉ。あたし、頑張るからねぇ！）
　二人は目と目で頷きあうと、まずはこっそりと放送室のドアを少しだけ開けた。
　そして、
（えいっ、わたし特製、『もなかグレネード』をくらえっ☆）
　もなかは、ポイッと手製の『もなかグレネード』を隙間から室内に放り込むと、壁に背中をぴったりとつけて、耳を塞いでカウントダウンを開始した。
（……１・２・３――どーんっ！）
　心の中で、もなかが叫んだのとほぼ時を同じくして、部屋の中でもなかグレネードが爆発した。
「な、なんだこれは……？　おい、しっかりしろ……」
　飛び散る大量のあんこから逃れた職員が、職員に駆け寄ろうとする様子が部屋の外から見える。
「うひひ、今のちょっと格好いい映画みたいでしたよね～」
「ちぇっ……。やっぱりグレネードだけで全員片づけられるほど甘くないかぁ……。でも、まだ終わりじゃないわよ、澄佳先輩っ！」
　中を覗き込んだもなかが、澄佳の方に水を向ける。
「うん、あたしにまかせてほしいんだよぉ！」
　言われて、澄佳が部屋の中に突っ込んだ。
　いつもは、ややのんびり屋な彼女も、今回はいつもより強気であった。
　そんな彼女の両手には大きなドーナッツが――。
「みんなに思い出させたげるよう、甘いお菓子の魅力！」
　澄佳の熱のこもった声と同時に投じられた『あんドーナッツ』がグレネードの爆発から逃れた職員を無力化する。
「あんもドーナッツも、どっちも美味しいんだよう！」
　ちょっと誇らしげに澄佳がそう言ったときには、ほとんど放送室の占拠は完了していた。
「よーし！　それじゃあ、ちょっと失礼して、この駅ビルの放送をジャックしちゃうわよ！」
　もなかは腕まくりをして、適当に設備をいじりまわしながら、駅ビル全体に放送を響き渡らせる方法を探し始めるのだった。