もちがもちもち？！　白い地獄へご案内？｜リアクション

もちがもちもち？！　白い地獄へご案内？

　そんな怒涛の様子においてけぼりを喰らっているのは、桜だった。彼女は自分から捕まえにいくのはどうも苦手だったからだ。
「案外、早そう……」
「困ったわ。私、ちょっととろいから捕まえられるかしら？」
　妙子もため息混じりにそういい、ずれた眼鏡を正しながら「網がいいのかしら？」ときょろきょろしていると、
「料理ならば……任せなサーイ！」
　びしっ！　と（いつのまにか）割烹着と三角巾を装着した露草が、テーブルにラップをしていた。そしておもいっきりそれに餅とり粉を散布！
「これを広げてお餅を隅においやるのデース」
　手際よく準備をした露草は、高いところにういていた餅をそれで捕獲しようと試みたのである。
　一方、少し離れた場所では修が器用に何か組み立てていた。金属製のザルを長めの麺打ち棒にワイヤーを使って固定しているようだ。特徴としては、ザルが回転しないよう棒の先にはすりこぎを横に固定している部分だろうか。
「Oh、面白い物デース」
「名づけて『餅とりザル』だよ。一個ずつ手で捕まえるのでは非効率だと思って用意してみたんだ」
　露草が興味深く見、修は出来栄えに満足しつつ答える。２人は手や箸で１つずつ狙っている真央とからんに目をつけた。
「なぁ、これでたくさん捕まえてみないか？」
「たくさんゲットしてお料理しマース♪」
　餅取り粉まみれのラップと餅とりザルに、２人も興味を持ったようだ。
「にゃふっ！　これならもっとたっくさん捕まえられるのだ！　からんちゃん、一緒にがんばるのだ！」
「もちろん！　たっくさん捕まえて食べつくすぞ、真央ちゃん！」
　猫っぽい笑顔で頷きあう真央とからんの後ろから手を上げる者が１人。様子を伺っていた妙子である。彼女は『餅とりザル』とラップを見せてもらい、眼鏡を正しながら観察。主婦としてはアイデアに目が行っているようだ。
「これなら、私も使いやすそうですね。手伝わせてもらえるかしら？」
　妙子の言葉に修と露草は勿論、と笑顔で頷いた。そして、キッチンに控える桜ににっこりと笑いかける。
「頑張って集めてくるから、待っていてくださいね」
「ありがとうございますっ」
　桜は感謝しつつ一礼し、餅を狩りに行く面々を見送るのだった。だが、この時桜は思った。
（やっぱり、私も手伝った方が良かったかしら……）
　だが、自分の判断は正しかったのだ、と後に桜は大きく頷くのであった……。

「捕まえマース！」
　露草が餅取り粉を塗したラップを広げれば、餅が引っかかっていく。傍らの妙子もまた器用にラップで餅を捕らえていた。
「まぁ！　これならするっ、と取れやすいし、とっても便利ね！」
　ゲットしたお餅を餅とり粉入りのタッパに入れて集めていく２人。少し離れたところでは修お手製『餅取りザル』を使って真央とからんが勢いよく餅を捕らえていた。
「これはごっそりいけるのだ」
　真央が思いっきり振り回してたくさんの餅を捕らえると満足げに笑う。からんもからんでフシャー！　と唸りながら餅を威嚇しつつ餅を追い込んで捕まえていく。
　ふよふよ飛んでいる餅は捕らえようとすると逃げる。だが、そんなに早いわけではない。だから、気合さえあればすぐにでも捕らえる事が出来たのだ。
「そっち行ったぞ！」
「どんとこーいっ！！」
離れたところでは流が餅を追いかけ、陽毬が露草からもらった餅取り粉を塗したラップを持って立ちはだかる。
「そりゃあっ！」
　思いっきり流が手を振り回せば、逃れようと急ぐ餅。しかしその先は陽毬が持つラップが待っていた。あえなく捕まってしまう数個の餅は見事に固まっていた。
「いくら餅取り粉があるとはいえ、取るのがめんどいよな……これ」
「そうなんだよね。ここなんか溶け合って１つになりかけてるし」
　お腹がある程度満たされて落ち着いた碧南が覗き込んで眉を寄せる。どうしたものかと３人で考えていると、
「そんな時はちょっと工夫するだけで美味しくなるんだ」
　別の場所で餅取りザルを振るっていた修がにっこり回答。彼は固まったそれをもう一回り大きなザルへと投入し……ようとしたときだった。

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