もちがもちもち？！　白い地獄へご案内？｜リアクション

もちがもちもち？！　白い地獄へご案内？

「よろしい、ならば捕まえて料理して食べつくすのだ。これは餅と人類の戦いなのだ！」
「食べるために食べ物があるんだ！　からんは食べるぞ！　いくらでも食べるぞ！」
　真央が闘志を漲らせて箸を握り締め、同じような様子のからんが大きく頷く。そんな姿を見かけた修が相変わらずだと苦笑すれば負けられない、と陽毬が俄然やる気を出し、流は流で「ほどほどになー」と合いの手を入れる。
「気晴らしにはちょうどいいかしら」
　桜がふんよりと浮かぶ餅相手にそう呟けば、冷静に妙子が呟く。
「食べても太らないか否かはともかく……このお餅を食べないと『フツウ』を守れないのよね？」
　そう言うと、彼女は覚悟を決めて料理しよう、とエプロンの紐を締めなおした。

　ともかく、今ココに餅と人間の戦いが始まった……ようであった。

「それじゃ、俺が追い込んで……」
「私が捕まえるっ！」
　流と陽毬の『食い友』コンビは協力して捕まえるようだ。流はにっ、と笑い餅をみつつ陽毬と頷きあう。
「ガンガン追い込むから、捕獲、任せたぞ？」
「どっちでもこーい、だよ！」
　２人は気合を入れてレッツハンティング！　流が餅取り粉を塗した手で宙に浮く餅をいくつも追い込み、待ち受ける陽毬がそれをキャッチ！　餅は流から逃れようと必死で逃げるので陽毬に気づかず、思うように捕まえる事が出来た。
「やった！　捕まえた！！」
「よーし、その調子でいくぞ！」
　２人は捕らえた餅をタッパーに入れ、次のターゲットを見つけては捕まえていく。
　少し離れた場所では真央がきなこ（砂糖入り）と大根おろし（醤油入り）やら、既に割った割り箸やらを準備して、近くを飛んでいる餅へ割り箸を一本ずつ突き刺しては捕獲し食べていた。そのままきなこや大根おろしの中に突っ込んで息の根を止めてからばくばく食すその光景は、もう、捕食といって等しかった。
「にゃーっ！」
　からんはからんで餅とり粉を塗した手で浮いている餅へと猫パンチ！　落ちてきたところをゲットしている。
「ん～、海苔ではさんでもいいかな？　きなこを手に塗した方が捕まえやすいかなぁ？」
　そういいながらも真央が用意したきなこへ捕まえた餅をダイブさせて食べれば、程よい甘味ときなこ特有のどこか懐かしい香りに眼を細める。
「おいしいぃ」
「のだ～♪」
　愛らしい表情でおもちをもっちもっちと食べる２人の姿に、何故かほっこりしてしまう流と陽毬なのであった。
　そんな４人とは違う雰囲気だったのが、碧南。彼女はバスケット部での激しい練習後、寝落ちしてこの世界に来た。極度の空腹状態だった彼女は、暴走寸前だったのだ。
（そこよっ！）
　無言で空を飛んでいる餅をジャンプでキャッチすると、そのまま口に。よく噛んで飲み込むと、次々に餅をハンティングしていく。確かにからんも素早い身のこなしをしているが、暴走状態とも言える碧南は彼女以上に素早かった。目撃していた修が、後にこう語っている。

　――その時の羽生は、まるで、野生のヒョウが狩をしているような、しなやかな動きで餅を捕まえていました――

　もぐもぐと２つ３つ食べた所で少し落ち着くと、捕まえる速度はそのままに味をつける余裕が出てきた。
「少しもらうわね」
「にゃっ？！」
　真央が持っていたきなこを手早く塗して口に入れ、次は近くにあった海苔を醤油につけて口に。そうして次々に食べていく碧南の様子に火がついて真央とからんもテンションを上げて餅を食べていく。
「私たちも負けてられないよっ！」
「だからって欲張りすぎると大変な事にならねぇか？」
　陽毬の闘志にも火がついたらしいが、流はなんだか嫌な予感がしてならない。それでも陽毬に強請られ、しかたなく餅追い漁を続けるのだった。

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