ある日の出来事。-1月その2-｜リアクション

ある日の出来事。-1月その2-

　せっかくの休日、いい機会だと白真白は買い物をしにシーサイドアウトレットまで足を伸ばした。

　と言っても実家はシーサイドタウンにあり、伸ばすというほど遠くもないのだが。
　さて、そんな今日の目当ては冬物の新しい服だ。
　もらったお年玉は、カードやゲームに大半を費やしてしまったが、まだちょっと残っているため、アウトレットかつ初売りセール中のこの時期なら何か買えると思ったのだ。
（あ、あと扇子も買いたいな。和雑貨屋さんもあったよね、寄らなきゃ）
　時期でもないのに扇子が欲しいと思ったのにはわけがある。
　冬休みの間にやっていたゲームのキャラクターが鉄扇を使っていたのだ。それがカッコよくて、憧れた。そして憧れた結果、私もやってみたい！　と思ったのだ。
　幸い真白のろっこんなら、普通の扇子でもなかなかのものになるだろうし、真似してみるだけ損はない。もしイメージと違ったって、扇子だったら夏には使える。
　そう予定を立てた後、お目当ての服を探しに入った店に、見知った顔があった。
「御幸ちゃんだー」
「あっ、真白ちゃん。あけましておめでとー」
「おめでとー、今年もよろしくね。
　御幸ちゃんも買い物？」
「そうだよー。ってことは、真白ちゃんも？」
「うん、初売りで安くなってる服狙い！」
「一緒だ！」
　目的が一緒だとわかると、なんとなく連帯感が生まれ、顔を見合わせてニコッと笑った。
「よかったら一緒に服見て回らない？」
「もちろん！　真白ちゃんさえ良ければご一緒させて？」
「えへへ、嬉しいな。……あっ、この服御幸ちゃんに似合いそう」
　マネキンが着ていた服を指差すと、御幸は確かに、といった顔で頷いた。
「そういう真白ちゃんにはこれかな！」
「えー、可愛すぎないかなぁ」
「そんなことないと思うよ？　私には着れない可愛さだから正直羨ましいっ」
「私からしたら御幸ちゃんの高身長の方が羨ましいんだけどなぁ……」
「……二人してないものねだりだねえ」
「……そうだねぇ」
　苦笑し合い、けれどもお互い勧め合った服を試着する。するとどちらもとてもよく似合っていて、お互いの見立てに驚いた。
「私、買っちゃおうかな？　真白ちゃん、どうする？」
「私も……これ、気に入っちゃった！　買ってくる」
　レジに並ぶ間も話は尽きなかったが、あまり長く彼女を拘束するのも悪いと思い、店を出たところでバイバイと手を振った。
　その瞬間、異変に気付く。
（あーあ）
　楽しい時間だったのに、文字通り水を差された気分だ。
（御幸ちゃんに気付かれなかったかな？　大丈夫だよね？　笑って別れたし、私自身気付いたの今だし）
　とにかく、と真白は多目的トイレを探す。アウトレットは大きい。トイレの場所もそこかしこにあって、見つけた多目的トイレは幸い空いていた。
（不便な体だなあ……なんて、普段は思わない、けどさ）
　楽しかった後の落差からか、ふとそんなことを考えてしまう。
　加えて、おむつの残りが少なくなっていたことも思い出す。
（後で薬局にも行って買ってこないと。知り合いに見られないといいんだけど）
　心配しながらおむつの形を整え、傍目からはそれを履いているとわからないように調整すると、真白は和雑貨屋へと足を向けた。

　雑貨屋には様々な種類の扇子があった。
　今の季節をイメージさせる、雪をモチーフとしたものから、どの年代にも愛されるであろう動物モチーフや木花モチーフのもの。
　種類も、紙扇子、生地扇子、白檀、舞扇子……と豊富で迷ってしまったが、結局真白が選んだのはシンプルな白無地のものだった。
　ゲームのキャラが持っていた扇子に装飾等がされていなかった、という理由と、単に安かった、という二つの理由が大きい。
　帰ったら早速実践するぞー、とウキウキした気持ちになりながら、真白はアウトレットを出、薬局へと向かうのだった。