【星幽塔】第二階層　ラッシュ・ザ・ストリーム｜リアクション

【星幽塔】第二階層　ラッシュ・ザ・ストリーム

　――ガアアアッ！

　石像が全身から水流を迸らせた。
　水晶の彫刻のように稠密で巨大な、三体のウォーターゴーレム。

　月の光に、剣、鎧、そして隆々と盛り上がる筋肉が露になる。
「おっ。……何か強そうなのがいやがる」
　不敵に笑う利平。
「……っても、先は長いし、あんまり消耗もできねえ……」
　おどろおどろしい紋様の、腕の籠手を構える。
「作戦『殴って倒す』！　行くぜ！」

　単純明快。
　その作戦、乗ったとばかり、刀も飛び出す。
　星の力を秘めた武器、切っ先鋭い日本刀を抜き打ち様、剣士型ゴーレムに吶喊。
　閃光が散った。
　鍔ぜりからとびのいて剣戟の応酬。刀の唐竹割りを腕で防げばがらあきの腹部を利平が掌撃。
　怒りに燃えて襲い掛かるゴーレムの斬撃を、自在に躱す利平。
　腰まである水は、利平に味方した。
　ダンスで下半身は鍛え上げられ、さらに緻密極まりない動きが習得されている。
　心身を自然の流れにまかせて、動きをアドリブで組み上げる。

　間断なく攻撃を打ち込みつつ、刀は焦りを感じる。

　腰まで浸かる水の中、迅速に動く刀。
　陸上ともまがう俊敏に、トリックはあった。
　ろっこん『加速』。

　彼の引き金は、すでに引かれていた。
　変容する、色と音を失った世界、その中を彼は駆けていた。　

　刀はさらに加速。水面を蹴り上げる。
　宙に跳躍、重力のくびきを振り払う。
　そのまま攻撃。

　だが、その狙いはリスクが大きい。
　梢と同じ結論に、彼もたどり着いていた。
　宙に躍り出た瞬間、格好の標的。
　加速中の自分が、動きを完全に制御できるかどうか。

　――勝機は一瞬だけ。
　最速の男、自在な動きを封じられ、身もだえするように剣を振るう。