【星幽塔】第二階層　ラッシュ・ザ・ストリーム｜リアクション

【星幽塔】第二階層　ラッシュ・ザ・ストリーム

　夜に沈んだ世界の、ずっと奥の方から、滝の音が響いてくる。
　蒼白い光が、ゆらゆらと揺れる純白の道を浮かび上がらせる。
　風が涼しい。
　月光が構築を照らして、だんだん、その姿を明らかにさせ始める。

　石と煉瓦で組まれた、巨大な水道橋。

　なぜ、こんなものがここにあるのか。
　どうして、塔の中に、こんなものが必要なのか。

　すべては不明のまま。今、彼らに課せられているのは、ここを踏破すること。

　現実から完全に遊離した、おとぎ話のような世界。
　そんな世界に、同じ学校の友人、見知った顔の仲間が一緒にいて、奇妙な力の埋め込まれた武器を手にして、戦いに挑んでいる。
　そのことが、ひどくおかしく思える。

　――行くぞ。

　誰かの声が響いた。

　皆が、水路橋の上を走り始める。

　くるぶしのあたりに、冷たい水の流れを感じる。
　ゆるやかな坂を、どんどん駆け上っていく。
　息が切れる。気持ちが逸る。
　服がじっとり湿り、汗が噴き出してくる。
　見れば、傍らの友人も真剣なまなざしで歩を進めている。
　部活動の練習や、体育のマラソン。
　非現実的な世界のことなのに、そんな現実的な感慨が浮かび上がってしまうのが、少しおかしい。

　自分がここにいて、こうして戦っていることが、不意に遠いもののように思えた。
　ちょうど、日常生活を送っていく中で「この世界は夢ではないのか」と、現実感が希薄になってしまうのと同じように。
　ひどく切迫して、焦れば焦るほど、そんな考えがふっと頭を擡げてくるのだ。

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