【星幽塔】第二階層　ラッシュ・ザ・ストリーム｜リアクション

【星幽塔】第二階層　ラッシュ・ザ・ストリーム

　　『星見の庭園』
　
　そう名付けられたそのフロアは、水路閣の最上部。天に手が届きそうな場所だ。
　彼方に青白く光る地平線がかすむ。天と地のはざま。
　ひどく暗いその場所の中央に、設えられた祭壇。
　あそこにたどり着けば、次の層への道が開かれる。

　いち早く空中ルートよりも庭園にたどり着いた、地下ルートグループ。
　彰尋の治癒で、戦線には立てる。
　ここまできて、躊躇はできない。待ち受けるのは、当然……。

　その時、地鳴りのような音がした。
　影が空を多い、水路から跳躍した水龍が、一同の前に現れる。
　三階建てのビルほどの巨体は、伸び上がれば、さらに大きくなるはずだ。
　すさまじい咆哮が、庭園を揺らす。
　――第二階層、最終バトル、開戦！

「これがこの階層のボスってわけね……」
　
　先制攻撃。エヴァの火球が唸りをあげ、夏朝の戦輪が投擲される。
　見越し射撃を行うため集中を開始した桜、彼ら三人を覆うように前へでるのは悠月。
　引き絞った弓を構える。
　防御力の弱い女性陣を狙い、水球が飛来する。
　――！
　流麗なヒム（讃歌）が、悠月の口から溢れ出る。
　ただ一人の口から発せられたと思えぬ、力強く逞しい歌声が、韻と世界に響き渡る。
　守護者、聖なる騎士の詩。
　ろっこん『Ｈｏｌｌｙ　Ｋｎｉｇｈｔ』。瞬間、生み出される防御障壁が一同を蔽う。
　大射程を持ちつつ、中近距離では防御も可能。
　多彩な攻撃を持つ相手であればあるほど、彼の真価は発揮される。

　仲間の抵抗を視界の端に捉えつつ、シグレ、跳躍。
　清涼な、豪奢な星空の舞台をバックに、俊敏な影が龍に向かう。

「一緒に踊っていただこう！」
　
　サーベルを突きつける彼の周りに、壮麗な水柱が突き立つ。
　時子の星の力――魔風の力で水を逆巻かせ、水柱を生み出す。
　清冽な水飛沫が煌めく。
　気合一閃、水龍に突撃。
　その足元を絡めとるように動く水柱。
　遅れはとらない。
　堅牢な壁、礼二郎と、それに不屈の戦士、ザ・ストレイトも猛追。

　礼二郎はガムを噛みちぎり、ろっこんを発動。
　攻撃動作を脳裏に記憶。それらを分析。
　似た動作を相手が行えば、周囲に伝達。
　悠月と互いにかばい合うような中盤をキープ。　

　一方、ストレイトは委細構わず、シグレと攻撃に向かう。
「オラオラァ！」
　水球を弾き、龍に突撃。

　それに対し水龍、悠然たる構え。水球を投げつけるばかり。

　ストレイト、それにシグレの攻撃は、囮。
　どちらも、効果的な一撃を敵に与えていないのは、分かっていた。

　第一層で、その脅威の力を見せつけたドラゴン。
　とくにストレイト――轟は、自分の全力が鱗をはがす程度だったのを覚えている。
　自分の全力が、まだはるかに及ばない相手であることも。
　その黒い龍よりも、迫力は数段落ちるとはいえ、やはり力押しは危険すぎる。

　だが、相手もそう簡単に手の内は見せない。防御姿勢を崩さない。
　じわじわと水球で追い詰め、消耗を狙う算段だ。
　夏朝、彰尋。相手に警戒する慎重派ほど、焦れている。
　祭壇から一向に離れようとしない水龍に、悠月は唇をかんだ。
　相手は相当に狡猾。
　
　何か、状況を一転させるものがあれば……。

「おらおらっ！」

　絶叫とともに躍り出たのは、空中ルートをたどった一同。
　パーティ合流。一番に飛び出すのは、利平だ！