【星幽塔】第二階層　ラッシュ・ザ・ストリーム｜リアクション

【星幽塔】第二階層　ラッシュ・ザ・ストリーム

　その瞬間だった。
　ひらりパラソルを回した時子、ろっこんを発動。
　その身を、鴉に変じさせる。
　柱に向けて、ゆっくりと飛翔を開始する。
　
　――魚の挙動が、明らかに乱れた！
　何らかの手段によるショートカットは、最大レベルの警戒が必要とされる。
　突如現れて、柱を狙う鴉の存在は、何をおいても駆除しなければならないトップレベルの危険物。
　咆哮を上げて、二体は時子に突撃を開始！
　あまりにも急激な方向転換。
　前衛軍団、反応が合わない！

　猛追する二体の魚。
　ふわふわと飛ぶ鴉、室内であまり高度が稼げない。
　星の力で追い風を生み出そうとするが、魚の猛追はあまりにも激しい。
　怒りの波動が部屋を揺らす。
　完全にとらえるため、二体は水面に浮上し、その身をたわめて跳躍の準備にかかる。
　今まさに、捕えられた鴉のように、魚の餌食になろうとする時子――。

　その瞬間、一条の矢が魚の腹を貫いた！

「あなたのその動き、完璧に読めるのよ」

　桜の、十全に練られた『見越し射撃』！
　激しい衝撃が黒の魚を襲い、至近距離の赤の魚を巻き込む。
　この機を逃すまじ！
　戦輪と火球、そして無数の矢が撃ち込まれ、シグレ、ストレイト、礼二郎が突撃を開始。
　反撃に転じようとした魚が、急に身を震わせた。
　全身をわななかせ、急激に頽れる。

　柱にしがみつき、星の力を送り込む彰尋と、彼を助けるようにした時子。
　
　上方からするすると梯子が降りてくる。
　これを登れば、上の方にたどり着ける。

「水位が上がっている？」
　夏朝の声に、一同が戦慄する。
　放っておけば、このまま水没してしまう。水の牢獄。
　タフネスに余裕のあるものは、疲労しきったものを背負い、梯子を上り始める。
　しんがりは夏朝。
　ねこシールを可能な限り貼り付け、重量を軽減する。
　
　みな、疲労が著しい。
　足元からせまる水、圧迫を感じる。
　手元を滑らせて、梯子から落ちそうになるのを、さらにシールで軽減。
　夏朝、ひたすら冷静に登っていく。

　下降してきたときと同じ、何時果てるとも思えない上昇ののち、僅かな光が差した。
　星の光。
　いよいよ、決戦である。