- 0
- 0
- 種族
-
- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
濃霧の夜に
【エピローグ】
翌朝。
ツアーバスは予定より数時間遅れて、京都へと到着した。
おかげで午前中は、かなり駆け足での神社巡りとなった。
だが、午後にはどうにかそれもおちつき、ゆったりと予定されていた神社を巡って参拝したり写真を撮ったり、土産物を買ったりと一行は旅を楽しんだのだった。
夕食のあとから出発までの時間は、各自、自由に過ごすことができたため、買い物をする者もあれば、駅周辺の温泉施設に足を運ぶ者もありと、誰もが京都の旅を満喫した。
やがて、出発時間の午後十時になると、バスは再び一同を乗せて京都をあとにする。
バスが走り出して、どれほど過ぎたころだろうか。
「あの三人を、元に戻す方法があればいいのにと、思うのです」
京都でも、なんとなくゾンビ化した三人を気にしていた美咲紀が、ポツリと言った。
「ああ。だが、現状ではどうしようもないだろう」
修が言って、小さく吐息をつく。
「ろっこんでもどうにもならないんじゃ、しかたがないよね」
後ろの席から声をかけたのは、ねむるだ。彼は夕食の時、美咲紀と修から、ろっこん『舞花の祈り』でもゾンビ化した者を治せなかった話を聞いていた。
一方、サキリは刀とタルト、海から『霧のセイレーン』の姿が自分が見たものと違っていたことを聞かされ、愕然としていた。
刀は、怪物は普通の人間の女性の姿で顔がなかったと言い、タルトは上半身は女性で下半身が魚だったと言う。海は、黒い影の塊のようなものにしか見えなかったと言った。
「……いったい、どういうことなんだ？」
「人によって姿が違って見えるなんて、ホラーっぽくていいね～♪」
眉をひそめるサキリに対して、タルトは楽しげだ。
「でも、そういうことなら、写真を撮っておけばよかったかもね」
「……そうね。写真ならきっと、本当の姿を写し出すことができていたかもしれないわ」
傍から、彼らの話を黙って聞いていた紫が、静かにうなずいて言った。
そんな車内の会話を聞くともなしに聞きながら、洋美は膝に広げたおみくじに改めて視線を落とす。
巡った神社の一つで引いたものだが、『小吉』と出た。
（去年もいろいろあって、このツアーでもトラブルでって、ちょっとがっくり来てたけど、なんか元気になった感じ）
胸に呟き、小さく笑みを漏らす。
（たとえ小吉でも、なんだか明るい兆しが見えたって気がするわ。どの神社も、すごくよかったし……やっぱり、来てよかった）
そんなことを思いつつ、彼女はおみくじを元通りにたたんで、バッグに入れた。
そして、隣にいる倫理子に声をかける。
「あなたも、おみくじ引けばよかったのに」
そう、洋美はあのパーキングエリアで話したのをきっかけに、京都でもなんとなく彼女と一緒だったのだ。
「いいのよ、私は」
倫理子は、小さくかぶりをふって返す。
洋美と一緒の神社巡りは、楽しくはあった。だが、やはりバスでの長時間の移動や人の多い場所を歩き回るのは、思った以上に疲れることだったらしい。
「……ごめんなさい、少し眠るわ」
言って、倫理子は目を閉じる。霧に閉ざされたパーキングエリアも、過去の恐ろしい出来事も、夢に現れないことを願いながら。
＋ ＋ ＋
寝子島の自宅に帰宅後。
濃霧の中を最後にバスから撮った写真をプリントアウトして、修は眉をひそめた。
渦巻く霧の中から、たしかに人の手――それも、女の手と思われるものが、さしのべられているのが写っていたからだ。
（……『霧のセイレーン』が、俺たちを追って来ていたと？ つまりは、あの怪物は滅んではいないということか？）
しげしげと写真を眺めて、彼は胸に呟く。
だがやがて、彼は小さく肩をすくめた。
（まあいい。俺たちは、そこから無事に脱出することが、できたのだから）
あのゾンビ化した三人のツアー客が、その後どうしているのかは、誰も知らない。案外今も、ゾンビのまま、当人たちは普通の人間のつもりで、毎日を送っているのかもしれない。
ちょうど、あの奇妙なパーキングエリアの従業員たちが、そうしているように。
ともあれ。
こうして、濃霧の夜の奇怪な出来事は、幕を閉じたのである――。
翌朝。
ツアーバスは予定より数時間遅れて、京都へと到着した。
おかげで午前中は、かなり駆け足での神社巡りとなった。
だが、午後にはどうにかそれもおちつき、ゆったりと予定されていた神社を巡って参拝したり写真を撮ったり、土産物を買ったりと一行は旅を楽しんだのだった。
夕食のあとから出発までの時間は、各自、自由に過ごすことができたため、買い物をする者もあれば、駅周辺の温泉施設に足を運ぶ者もありと、誰もが京都の旅を満喫した。
やがて、出発時間の午後十時になると、バスは再び一同を乗せて京都をあとにする。
バスが走り出して、どれほど過ぎたころだろうか。
「あの三人を、元に戻す方法があればいいのにと、思うのです」
京都でも、なんとなくゾンビ化した三人を気にしていた美咲紀が、ポツリと言った。
「ああ。だが、現状ではどうしようもないだろう」
修が言って、小さく吐息をつく。
「ろっこんでもどうにもならないんじゃ、しかたがないよね」
後ろの席から声をかけたのは、ねむるだ。彼は夕食の時、美咲紀と修から、ろっこん『舞花の祈り』でもゾンビ化した者を治せなかった話を聞いていた。
一方、サキリは刀とタルト、海から『霧のセイレーン』の姿が自分が見たものと違っていたことを聞かされ、愕然としていた。
刀は、怪物は普通の人間の女性の姿で顔がなかったと言い、タルトは上半身は女性で下半身が魚だったと言う。海は、黒い影の塊のようなものにしか見えなかったと言った。
「……いったい、どういうことなんだ？」
「人によって姿が違って見えるなんて、ホラーっぽくていいね～♪」
眉をひそめるサキリに対して、タルトは楽しげだ。
「でも、そういうことなら、写真を撮っておけばよかったかもね」
「……そうね。写真ならきっと、本当の姿を写し出すことができていたかもしれないわ」
傍から、彼らの話を黙って聞いていた紫が、静かにうなずいて言った。
そんな車内の会話を聞くともなしに聞きながら、洋美は膝に広げたおみくじに改めて視線を落とす。
巡った神社の一つで引いたものだが、『小吉』と出た。
（去年もいろいろあって、このツアーでもトラブルでって、ちょっとがっくり来てたけど、なんか元気になった感じ）
胸に呟き、小さく笑みを漏らす。
（たとえ小吉でも、なんだか明るい兆しが見えたって気がするわ。どの神社も、すごくよかったし……やっぱり、来てよかった）
そんなことを思いつつ、彼女はおみくじを元通りにたたんで、バッグに入れた。
そして、隣にいる倫理子に声をかける。
「あなたも、おみくじ引けばよかったのに」
そう、洋美はあのパーキングエリアで話したのをきっかけに、京都でもなんとなく彼女と一緒だったのだ。
「いいのよ、私は」
倫理子は、小さくかぶりをふって返す。
洋美と一緒の神社巡りは、楽しくはあった。だが、やはりバスでの長時間の移動や人の多い場所を歩き回るのは、思った以上に疲れることだったらしい。
「……ごめんなさい、少し眠るわ」
言って、倫理子は目を閉じる。霧に閉ざされたパーキングエリアも、過去の恐ろしい出来事も、夢に現れないことを願いながら。
＋ ＋ ＋
寝子島の自宅に帰宅後。
濃霧の中を最後にバスから撮った写真をプリントアウトして、修は眉をひそめた。
渦巻く霧の中から、たしかに人の手――それも、女の手と思われるものが、さしのべられているのが写っていたからだ。
（……『霧のセイレーン』が、俺たちを追って来ていたと？ つまりは、あの怪物は滅んではいないということか？）
しげしげと写真を眺めて、彼は胸に呟く。
だがやがて、彼は小さく肩をすくめた。
（まあいい。俺たちは、そこから無事に脱出することが、できたのだから）
あのゾンビ化した三人のツアー客が、その後どうしているのかは、誰も知らない。案外今も、ゾンビのまま、当人たちは普通の人間のつもりで、毎日を送っているのかもしれない。
ちょうど、あの奇妙なパーキングエリアの従業員たちが、そうしているように。
ともあれ。
こうして、濃霧の夜の奇怪な出来事は、幕を閉じたのである――。
あとがき
担当マスター：
織人文
ファンレターはマスターページから！
こんにちわ。マスターの織人文です。
参加いただき、ありがとうございました。
濃霧の中での奇妙な体験、少しは楽しんでいただけたでしょうか？
最後はなんとか無事に脱出し、京都での神社巡りもできて、おそらくは厄払いになったのでは？ などとも思ったりします。
それでは、参加いただいたみなさんが、少しでも楽しんで下さったなら、幸いです。
参加いただき、ありがとうございました。
濃霧の中での奇妙な体験、少しは楽しんでいただけたでしょうか？
最後はなんとか無事に脱出し、京都での神社巡りもできて、おそらくは厄払いになったのでは？ などとも思ったりします。
それでは、参加いただいたみなさんが、少しでも楽しんで下さったなら、幸いです。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2016年04月14日
- 参加申し込みの期限
-
- 2016年04月21日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2016年04月21日 11時00分
