【お正月】初夢～今年のお年玉はダテじゃない！｜リアクション

【お正月】初夢～今年のお年玉はダテじゃない！

●真境名アリサのセレブな日々

「お年玉をあげようって……」
　変な人に絡まれたかなーというのが、アリサの本音だった。
「変なものが入ってたらどうしよう」
　突っ返そうにも相手はもういない。仕方なく中を検める。
「ちょ、ちょっと何これ！？」
　札束が溢れんばかりに入ってるではないか！　
「諭吉先生！　福沢諭吉大先生！」
　時代が違えば、編集者かファンの少女のような台詞を連発するアリサ。
「……が、いったい何枚入ってるっていうのよ！」
　まさに嬉しい叫びであった。
「これ全額、あたしに？」
　なんで自分に、と考えても仕方のないことだった。相手いないし。
「ええ……迷う必要なんてないわ。どうせあぶく銭なんだし、ドバーっと使うわよ！」
　思い切りよく宣言して、彼女はその日、仕事を辞めた。

　数日後、アリサは仕立ての良い服を着て、ＳＰと弁護士を連れていた。
「というわけで、ステラ・デッラ・コリーナの最上級スイートルームを年単位で宿泊……いや、ホテルごと買収よ！」
『な、なにいいい！？』
　セレブ界に新星のごとく現れた「真境名アリサ」の伝説は、地元の高級ホテル買収から始まった。
　あくる日には、プライベートジェットを即金で買い、それで世界一周を果たしている。
「へえ……このヘリって一億なの」
　ＮＹで、遊覧飛行をするためのヘリを選ぶアリサ。
　単価はドルである。戦術ヘリも真っ青だ。
「そんなにねぇ」
「別のにされますか？」
「いいえ？　そんなに安いなんて、物凄くお得なお値段よね♪　十機買うわ」
　アリサの伝説は有名だ。
　たとえばドライブしたいと、数億円するスポーツカーを買うも……数時間乗ったら飽きたらしく、通りすがりの人にタダであげたり。
　はまったカジノで使い過ぎて、カジノの総資金が倍になったとか。「カジノへ行ったら、ゲームをするよりアリサを探して媚びろ」という格言が生まれる。
　日々洗練されるアリサの容姿は、最高級の美容サービスとブランドの賜物。「どうせ整形だろ」という噂がたつほどだったが、それすら金の力でもみ消した。
「でも、やっぱり日本が一番楽しいわ！」
　世界で遊び回った末に言ったのが、これ。
　毎日友達を呼んだり、たまたま知り合っただけの人を巻きこんで、毎日パーティー三昧の乱痴気騒ぎである。

　セレブリティ！　乱痴タイム！

「昨日は六本木のクラブを一日中借り切ったし、今日は別のが良いなー。初夏ならプールサイドでパーティね。じゃあ明日は……」
　杜子春、という話がある。
　仙人に頼んで大金持ちになるが、結局貧乏になるくだりがある。
　しかしアリサは同じ轍を踏まなかった。
　あの日貰ったカバンからは、今もお金が溢れてくるのだ。どれだけ使っても消えない。
　最初はアリサも浮かれ騒いでいたが、次第に不気味になっていった。

「いつになったら消えるのよ」
　苛立たしい声で、カバンの入った金庫を閉めるアリサ。
　最近気づいたのだ。
　雇い人たちや、付き合ってる友人が自分を人間として見ていないことに。
「また募金要求に脅迫状、か」
　届いた手紙に顔を曇らせるアリサ。
　ただの募金の誘いなら良いが、断れば暴力行為に及んでくる類のものが増えている。詐欺師（イケメン）も多いし、逆玉の輿を狙う輩も増えた。あの手この手と、何度退けても埒が明かない。
　その誰も、本当の彼女を好きになってくれる人はいない。
　だがもしかして、自分の心が曇って真実が見えないだけなのか？
　お金のせいで。
「このカバンさえなければ！」
　捨てようとするが、今の地位を築いたそれを捨てれば、本当に人は離れてしまう。
「どうすればいいのよ！」
　と、キレて暴飲暴食。大暴れして警察に捕まったところで夢が終わった。
「うわー……」
　飛び起きて。落ち着いて。苦笑する。
　テレビをつけると、セレブのスキャンダルが放送されていた。