【お正月】初夢～今年のお年玉はダテじゃない！｜リアクション

【お正月】初夢～今年のお年玉はダテじゃない！

●千歳飴楓子の課金天国

「お年玉か」
　楓子は手にしたバッグの中身を見た。
　夢であることは分かっていた。
「所詮夢だが、思う存分使わせていただくとするか」
　楓子はコンビニに寄ると、とりあえずバッグの中の金をありったけ、電子マネーを入手した。
　店員が「アギエエエ！？」とか奇声を上げていたが、よく分からない。
　ついでにクレカ（クレジットカード）課金の準備もＯＫ。
　さすがに夢だから、使い過ぎで警察が来ることもあるまい。
　楓子はスマホアプリを起動すると、あとはひたすらゲームに課金し始めた！

　課金！　課金！　課金！　課金！　課金！　課金！　課金！

「十連召喚ＳＲ確定？　とりあえず目玉ＳＳＲ狙って百回回すか」
「星五英雄か。特攻ならフル覚醒だな」
「ペット強化アイテムカンスト。体力ポーションカンスト。魔力ポーションカンスト。全使用。購入。全使用……他愛ない」
「クールタイム面倒。課金短縮、進撃。課金短縮」

　ガチャを何百万円分も回したり。一個千円以上のアイテムを天井まで買ったり。
　課金は力が信条とする楓子。これ幸いとプレイしている全てのゲームでお金を使えるだけ使っていく。
　優先順位が低くて微課金レベルに近かったものも含めて、すべてが超重課金・超廃課金仕様へと塗り替えられていく。
「ずっと欲しかった、最高レアリティの装備や激レアキャラクターも手に入ったぞ。満足満足」
　デッキはすべてが最高レアリティにして、能力も最高上限。イベントは金の力でランキング一位を独占し、初日にして「あとは流してＯＫ」という状態。
　対人戦は負け知らず。イベントボスも鎧袖一触である。
　あまりにやることがないのでアイテムを買っていったら、それすらも購入上限になってしまった。
　いつもはドキドキワクワクしていたガチャ演出。それも今やスキップ連打。あの日々がちょっと懐かしい。

　だがしかし、カバンの金はいつまでたっても無くならなかった。
　新規のゲームにも手を出したが、もはやそれすら買う物がない。
　自室に転がったカバンを見て、ふむ、と楓子は一考した。
「そういえば……これだけのお金があれば思う存分『この能力』を発揮できるのか」
　投げた現金を蜂蜜に変えるろっこん。
　課金は力、課金は蜜の楓子には、乱発などそうそう望むべくもなかったが。
「一度やってみたかったのだよ。蜂蜜風呂」
　カバンを持って浴室へ。
　中から湯水のごとく溢れてくる札束を放り投げ、ろっこんを発動。
　あっという間に浴槽にたまった蜂蜜に、楓子は満足げな吐息をもらした。
「やはり、お金はどれだけあっても良いものだ」
　目論見は大成功――かと思いきや、ここで事情が変わった。
「む？」
　カバンから流れ出てくる大量の蜂蜜は、その勢いを減じることがまるでない。
　洪水もかくやの勢いで浴槽から溢れた蜂蜜に、楓子は逃げる間もなく溺れてしまった。
「お金はあればある程良いと思っていたが………これは計算外だったな」
　果たしてこれは、お金に溺れたというべきか。
　楓子は世界を満たしていく蜂蜜の中で意識を失った。

「……」
　目が覚めると朝だった。
「オチは残念だったな」
　だが、一度してみたかった「お金を際限無く使う」行為ができて、どこか満ち足りた表情の楓子だった。