フリーマーケットに行こう｜リアクション

フリーマーケットに行こう

【輝くもの】

天野と別れたラッセルと真辺の二人はアンティークの置物やアクセサリーを中心に出品しているスペースが固まった一角に足を運んでいた。
会場側が意図してそうしたわけではなく、自然と同じジャンンルが集まった結果らしい。

「おお……綺麗！……結構するなこれ。アンティークか」

ラッセルが目を止めたのは黄色い鳥の置物。
ろっこんで自分が変化した姿にどこか似ていて、くすっと小さな笑みが漏れる。

「さくくん、それ買うのかい？」
「んー、どうすっかなぁ。もうちょい回ってから決めようかな」
「そっか～、あ！あっちにシルバーアクセ売ってるよ～」
「お、マジで？」

そう言って二人が立ち寄ったのは桐生計都のスペースだった。
計都は人と接するのが苦手な内向的な少年だ。
しかし苦手なりにも克服しようと努力していて、今回のフリーマーケットもいつまでも怖がってはいけないと一念発起して参加することに決めた。

（それに自分の作ったものの評価も気になるし……）

手先の器用な計都が出品物に選んだのは自作のアクセサリーだった。
革紐とトンボ玉、ビーズを組み合わせたシンプルなブレスレット。
トンボ玉のストラップ。
そしてシルバーアクセサリーのペンダント。
カラフルで花の模様がついたトンボ玉もシルバーアクセサリーも華々しい魅力はないが、シンプルの中に優しい温もりが感じられる。

「ぬん、シルバーアクセにトンボ玉？」
「そっちのトンボ玉、なんかほわほわしてて真辺らしいな。もしかして手作りか？これ」
「あ、い、いらっしゃいませ！そうです、ここにあるのは僕が作ったアクセサリーで……それで、ちょっと形が歪なものもあるんですけど。それも可愛いかなって……あ、すみません」

つい余計なことまで口走ってしまったかと口を抑える計都だったが、ラッセルと伸幸は感心した様子でアクセを眺めており気分を害した様子は微塵もない。
ほっと胸を撫で下ろした計都にラッセルがシルバーで出来た十字架を手に取りながら尋ねる。

「なぁ、俺らとそんなに年かわんねーみてぇだけど、もしかして寝子高生？」
「あ、は、はいっ！寝子高1年6組の桐生計都です」
「おー、今日のフリマ、結構寝子高の生徒が出店してるって聞いたけど桐生もそうだったのか。俺、1年1組の桜井ラッセル。で、こっちが」
「同じく1年1組の真辺伸幸だよー、よろしくねぇ」

人見知りな計都に対してラッセルはとても気さくだ。

（眩しい、なぁ……）

太陽の光に照らされラッセルの金髪は眩く光り、計都は思わず目を細める。
しかし眩しいのは視覚的なものだけが理由じゃない。

（いつか僕もこんな風に輝けたらいいな）

そんなことを思って計都が自分を見つめているとは知らず、ラッセルは先ほど手に取った十字架を陽の光にかざして見る。
脳裏をよぎるのはこのアクセサリーが似合いそうな大切な人のこと。
ニッと笑みを深くしてラッセルは十字架のペンダントを計都に差し出す。

「決めた！俺、コレ買うわ」
「おや、さくくん、さっきの鳥さんはいいのかい？」

伸幸が首を傾げて尋ねるが、ラッセルに先ほどの迷いは見受けられない。

「ん？ほしかったけどさ、彫刻は超えてーんだ。目に焼き付けたし、アレより上を目指してぇ」

それは半分だけホントのこと。

（本音を言えば大切な人に喜んでもらえる、それが一番嬉しいんだよな）

もう半分のホントを胸の内に隠し、銀の十字架を吊るしたペンダントはラッセルの元へ。

「ありがとうございました」

計都の穏やかな声に見送られ、ラッセルと伸幸の二人は先ほど別れた天野と合流したのだった。