【お正月】寝子島神社に願いを込めて｜リアクション

【お正月】寝子島神社に願いを込めて

　大晦日からの寝子島神社。二年参りをし、初日の出を拝んだ。
『正月』を満喫した小山内海と御剣刀にとって朝の空気は本当に清々しいものだった。
　夜な夜な稽古をしに境内へと訪れる刀にとっては慣れ親しんだ場所なのだろう、海をエスコートするように出店の並んだ参道へと彼女を誘ってゆく。
（んん……さすがに眠くなってきたかな……）
　ふあ、と小さく欠伸を漏らす海へと視線を向けて、刀は「これから」と口を開く。
　逸れない様にと服の裾を掴み、二人揃って歩くのも良い物だが時間も時間だ。賑わいを増すにつれ朝を実感すると眠気がせり上がってくる。
「流石に眠くなって来た。露店で朝ごはんを済ませたら改めて神社に行って帰るか」
『うん、私もそれでいい』
　スケッチブックに書いた言葉を眠げに書き刀にこくりと頷いて、朝ごはん探しへと喧騒の中へとゆっくりと歩を進めた。

　

　いらっしゃいませ、と楽しげな声が聞こえる。ざわめきの中で調理中の音や匂いが食欲をそそった。
　戦利品を抱え、参道商店街の隅にあった人気ないベンチを目指した。
　朝焼けを浴び、妙に食欲をそそる参道商店街の露天群は普段よりも十倍増しに思えてやまなかった。
「海は何買った？」
『みたらし団子だよ。刀くんは……』
　言葉無くとも表情から感じられる。たこ焼き、とじいと見つめた海は白い息を吐き笑みを零した。
　見慣れた商店街が普段と違って見えるのは新年の『初詣』ならではなのだろう。
　湯気立てるたこ焼きに、振り掛けられた青海苔が香ばしい。かり、とした歯応えの後、とろりと蕩ける絶妙な焼き具合は冷凍食品とは比べ物にならない上質さを感じさせた。
「こういう露店のご飯が美味しかったりするし、参道商店街、中々侮れない……」
　舟に乗せられたたこ焼きのソースはミックスし作られたものなのだろう。出汁のかおりや味わいがよく馴染みひとつ、もうひとつと進ませる様だ。
　海の購入したみたらし団子も屋台で実演するように焼かれていたものだ。
　柔らかい団子に絡んだみたらしの蜜が甘さと上品さを感じさせる。正月に食べるにはうってつけだろう。
『こういうハレの日の露店の食べ物ってなんだか普段より美味しく感じるよね』
「そうだ。海も食べてみるか？」
　ほう、と団子を頬張り幸福そうな笑みを零した海の目の前に差し出された大玉。
　落ちないようにと支えられた掌が何とも気遣いを感じる。膝の上に置いた皿へとみたらし団子を置いて、あーんと口を開いた海は「美味しい」と熱く蕩けたたこ焼きを頬張った。

（可愛い小動物を餌付けしてるみたい――いや、うん……眠くて思考がヤバいよ）
　無防備に啄ばむ小動物の様で可愛いとは眠たい刀の『妖しい気分』の一部分なのだろう。
　それも知らぬ状態で海は『刀くんもみたらし団子どう？』と何時もと変わらぬように接するのだった。