【お正月】寝子島神社に願いを込めて｜リアクション

【お正月】寝子島神社に願いを込めて

　巫女に勤しむ神楽へと声を掛けた刀は「おつかれ」という労りの返事に二人分の甘酒をゲットする。
　冷え込む朝に白い息を漏らす海へと差し出した甘酒は優しい味がした。
　砂利を踏み、社務所で引いた御神籤の結果の発表をしようと二人は揃って結果を開く。
「凶……！？」
　残念な結果を引き当てた刀に、中吉と言う順当な結果を引いた海。
　少々ドラスティックな御神籤の結果はきちんと枝に結び付け――『御守り』へと神頼み。

　

『刀くんには勉学の御守りがいいと思うんだけど。ほら、テストまたダメだったって』
「そうだな、御守り。神頼みも……――いや、ないな」
　海の進言に、刀の脳裏に浮かんだのは破天荒なののことテオの姿。
　神魂絡みの事件もあるだろうと警戒し、『無病息災』の御守りを選び取ったはいいが――『勉学』に関してはののこ頼みでは後利益があまりなさそうだ。
「まあ、気持ちの問題だ」
『ののこちゃん……』
　そこまでスケッチブックに書いた後、海はうんうん悩ましげに文字を綴る。
『大丈夫、かも？』
　刀が御守り選びに苦悩している傍らでこっそりと恋愛成就のお守りを購入した海は其れを隠す様に｢秘密かな」と小さく笑みを零す。
　彼女の購入したものが何か分からず首を傾いだ刀の視線が『恋愛成就』や『良縁祈願』に止まり、彼はちら、と海へと視線を向けた。
「―――」
　克ち合った視線に、慌てて視線を逸らす。かっ、と赤みの差した頬を隠す様に咳払いを幾つかし刀は白い息を吐きだした。
　身近には可愛いと思う女の子が二人いる。意識してしまうのは仕方がないのかもしれない。
　しかし、目標の為に今は直向きに居る。その『目標』の果て、いつかは――
　考えを消す様に頭を振って、刀は欠伸を漏らした海をベンチへと誘った。

　参道へと歩む人だかりを眺めながら、張り詰めていた糸が切れた様にかくん、と海の頭が落ちる。
　刀の肩へと凭れ掛かる様に力を抜いた海はすう、と寝息を立て眠気に身を任して居た。
「海。そんな無防備に寄り掛かったら襲われても仕方ないんだぞ」
　細い肩へと上着を掛け、そっと抱き寄せた華奢な身体の温もりに妙な想いが競り上がる。
　薫るシャンプーの香りに、うずめた鼻先に僅かな緊張を感じて刀は瞼をゆっくりと下ろした。
（いやホント今ヤバいからさ、このまま寝ておくか……）
　温もりに身を任せ、寒くない様にとぎゅっと抱きしめた細い体は眠るのに最適だ。
　寒さも忘れてゆっくりと、眠りの世界へと落ちてゆく――……。

　――その後、寝ちゃってたと慌てて起きた海が近いと頬を赤らめる事をまだ二人は知らない。