奇妙な昼休み～先生、ろっこん発動しっぱなしです～｜リアクション

奇妙な昼休み～先生、ろっこん発動しっぱなしです～

　美味しいお菓子を、わいわいと皆で食べる事が出来て絢子はとても幸せそうだった。満面の笑みを広げ、にぱっ、と笑う。
「あーちゃん、すっごく楽しかったぁ！　お兄ちゃん、お姉ちゃん、ありがとう！」
　絢子の満足そうな顔に、４人はほっこりとなりながらも……どうしたら元に戻るんだろう、と本気で悩んだ。
（まったく戻る雰囲気が無いな）
（と、とりあえず様子を見よう……）
（これでダメなら、万策尽きましたよぉ）
（白沢先生、もしかして放課後もこのままだったり？）
　４人が不安げに顔を見合わせていると、いつの間にか後片付けの時間に。とりあえず彰尋が家庭科準備室で絢子の相手をし、他のメンバーで後片付けを猛スピードで済ませる。
「これで先生が戻らないなら、どうすれば……」
　そう、彰尋が呟いたとき……ふと見れば、絢子が椅子の上で眠っていた。仕方が無いので、保健室に運ぼうか、と考えていると、いつの間にか元の姿に戻っていた。
「！　先生が……」
「よかったけど……どうする？」
　美咲紀がほっ、とした様子でそういうも、碧南が困ったように刀と彰尋をみる。仕方が無いので椅子にかけてあった絢子のカーディガンをかけてあげる事にした。
　後から刀が様子を見に行くと、絢子は丁度目覚めたところだった。ろっこんが発動していたときの事を憶えていない絢子は、「疲れが溜まっているのかしら……」と不思議そうに首をかしげたという。

　――生物室。

「タクミ！　いるますかっ！」
「……ん？」
　５時間目はあちこちをこっそり（本人談）回って散策していたトワ・E・ライトフェロゥは、生物室を訪れていた。ちょうどそこではメイクを落とした牛瀬巧が少年の姿のまま提出されたプリントやら宿題やらのチェックを行っていた。始めは驚いた巧であったが、とりあえず何も言わないのでそのままにしておいた。トワは飾られた鳥や花などの写真を見渡し、楽しげな声を上げた。
「今日はたしか小学校が昼までやったな」
　巧がそう問いかけると、トワはにっこり笑って頷いた。
「Yes！　今日は先生たちがカイギなので elementary schoolはお昼までだたよ」
　そうかそうか、と巧は相槌を打ち、置かれた椅子に座っていい事を伝えると生物準備室から小さなバスケットを持ってきた。トワがそれを見ると、中には色とりどりのキャンディーが入っている。
「お兄さんかお姉さんでもココに通っとるんか？」
　飴ちゃん食うか？　とキャンディーを見せながら問いかける巧に、トワは頷きながらも困った顔で口を開く。
「カエデ、みつからないデスよ。体育館に行こうと思ったら図書室に着くシ、屋上に行こうとしたら中庭に戻ってきたりするマス。high school labyrinth デス」
　と答える。これに巧は思わずくすくす笑い、トワは「笑い事じゃないデス」と少しだけ不機嫌そうな顔をした。
「ま、ここはちょっと広いからな。ちょっとぐらいやったら休憩して行ってもええで。騒いだらあかんよ？」
「はーいっ。タクミは……missionデス？　ならトワも手伝うマス！」
　巧の言葉に、トワが笑顔で返事をしつつも目をキラキラさせながら提案してくる。そんな姿に子ども達の姿を重ねたのだろう。巧はやんわりと優しい顔になった。
「お仕事や。お兄さんお姉さんたちが出してくれた宿題をチェックしとるんよ。ほら、この絵とか上手いやろ？」
　そう言って見せた花の絵に、トワは目をさらに輝かせる。
「トワさんに手伝ってもらう事か……。せやな、ここにある本をこっちの棚に入れてくれへん？　それが終わったらこの本に貼った付箋を全部とってもらおか」
「！　がんばるです！」
　お手伝いをお願いされたトワは、嬉しそうに頷いた。

　この後、お目付け役的存在の楓と合流した際、ご褒美にもらったたくさんの飴を彼に手渡す事になる。