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- 種族
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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
アローン ザ ワールド
薄く、瞼を開く。
色素のほとんどない白雪の頬に白銀の長い髪を滑らせ、桜 月は血色の瞳を瞬かせる。
遮光カーテンの隙間から流れ込む冬の白い朝陽が、ベッドの脇に光の道を作っている。通常の人間ならばなんということもない光は、けれど色素持たぬ瞳にひどく眩しかった。銀色の睫毛の影に瞳を隠しつつ、ベッドに横たえていた身を起こす。
そうしながら、不審に思って寝起きの首を傾げる。
サイドテーブルのアンティーク時計が示しているのは、いつもならばとうにメイドが起こしにきている時間。
大切な友人でもある彼女が来ないことを不思議に思いながら、服を着替える。自室の扉を開き、星ヶ丘寮の廊下に出る。
朝陽の流れ込む廊下に一歩踏み出して、気づいた。
人の気配がしない。
(……？)
白銀の髪を震わせ、視線を巡らせる。
いつもならば、朝の廊下には誰かしらの気配があった。姿は見えずとも足音が聞こえた。話し声が聞こえた。今はそれが一切しない。
耳を圧する静寂に耐え兼ね、隣の部屋をノックする。返事はない。
足早に食堂に向かう。誰も居ない。
厨房にも、廊下にも、スタッフの姿はない。
知らず浅くなっていた呼吸に目眩を覚えた。開け放たれたままの食堂の扉にもたれかかって、入り口付近の壁に備え付けられた内線電話が目に入った。震える指に受話器を取る。メイド室をコールするも、いつもならばすぐに繋がるはずの呼び出し音はいつまでも耳元に鳴り響くばかり。
誰一人として、人の声がしない。
ここには誰も居ない。
察した瞬間、背中にヒヤリ、何かが通り抜けた。
凍る背筋に思わず蹲る。
落ちた視線の先、誰も居ない食堂に煌々と灯る電灯に照らされ、床に伸びる己の影。
床に写る影を見つめる。影を凝視し続けるうち、無意識にろっこんを使おうと、己の影を立体化させようとしていることに思い至って、けれど一向に反応がないことを知って、月はとうとうくしゃりと顔を歪めた。
冷たい床に指を触れさせる。いつもならおぞましい気配を放ちつつ己が前に現れてくれる影は、縋るようにどれだけ呼びかけても反応がなかった。
(……何で？ 何で！？)
触れた指先に感じられるものはない。ただ己の影が揺らいでいるばかり。
「ッ、……」
影から瞳と指を引き剥がす。物音ひとつ、人影ひとつない世界を見渡す。
「誰かいませんか？」
放った声は己のものと思えぬほどに震えていた。
「誰かいませんか？」
声を絞って呼びかけても、返ってくるのは僅かな木霊ばかり。誰の反応もない。
「誰か、」
冷え切った身体に暴れ始める心臓を両手に抑え、
「誰かいないの！？」
悲鳴じみて叫ぶ。
「誰か！」
叫ぶ。反応は、無い。
誰もいない。
(誰も、いない)
誰も、傍にいてくれない。
自分以外に、自分のおぞましい影すらもいない恐怖に息が詰まった。
世界から逃げるように駆け出す。追われるように外に出たその瞬間、朝の眩しい光に瞳を刺された。打たれたように後退る。玄関の傘立てから日傘を手にする。
(誰か、)
星ヶ丘寮界隈の閑静な町並みを小走りに通り抜ける。人の姿はない。
人の気配のない街は、静かと言うより空虚で、その虚ろさに月は怯えた。
歩を進めるごとに肌を刺す朝陽に瞳を顰め、熱持ち痛み始める肌を指先に撫でる。道沿いのコンビニへ逃げ込む。
来客を告げるチャイムに応じる店員の姿もない。早朝にも関わらず明るく灯る電気も、豊富に並ぶ商品もいつものまま、けれど人の姿はない。
「誰か、」
人がいるかもしれないという期待を裏切られ、月は思わず両手で顔を覆った。
「誰か……」
祈るように呟く。人のいないコンビニを離れ、日傘の影を頼りにひとり街を彷徨う。飲食さえ忘れ、日が落ちるまで街に人を捜し続けて、――誰に会うことも、人の気配を感じることすらもないまま、疲れ果てて寮へと戻った。
(やっぱり誰もいなかった)
身体を重く侵す疲労と絶望とに肩を落とす。
コンビニと同じに品物ばかりがいつも通りに揃う寮の売店で紅茶のペットボトルを手に取る。いつも通りにレジに持って行こうとして、空のレジ前で立ち尽くした。知らず震える指先で、レジカウンターに代金を置く。
誰もいない廊下を渡り、自室に戻る。お気に入りのカップに紅茶を注ぎ、疲れ果てた身体を椅子に座らせる。渇き切った喉に紅茶を流し込んで、
(……美味しくない)
息を落とした途端、頬を涙が伝った。
零れる涙と共、いつも傍に居てくれるメイドであり友人である少女の名を呟く。
祈るように、縋るように、友人の名を呼び続ける。
身を支えていることすら困難になってきて、椅子の脇のベッドに倒れ伏す。肩を震わせ、息を震わせ、ひたすらに友人の名を呼び続ける。
泣き疲れて眠りにつくまで、ずっとずっと。
色素のほとんどない白雪の頬に白銀の長い髪を滑らせ、桜 月は血色の瞳を瞬かせる。
遮光カーテンの隙間から流れ込む冬の白い朝陽が、ベッドの脇に光の道を作っている。通常の人間ならばなんということもない光は、けれど色素持たぬ瞳にひどく眩しかった。銀色の睫毛の影に瞳を隠しつつ、ベッドに横たえていた身を起こす。
そうしながら、不審に思って寝起きの首を傾げる。
サイドテーブルのアンティーク時計が示しているのは、いつもならばとうにメイドが起こしにきている時間。
大切な友人でもある彼女が来ないことを不思議に思いながら、服を着替える。自室の扉を開き、星ヶ丘寮の廊下に出る。
朝陽の流れ込む廊下に一歩踏み出して、気づいた。
人の気配がしない。
(……？)
白銀の髪を震わせ、視線を巡らせる。
いつもならば、朝の廊下には誰かしらの気配があった。姿は見えずとも足音が聞こえた。話し声が聞こえた。今はそれが一切しない。
耳を圧する静寂に耐え兼ね、隣の部屋をノックする。返事はない。
足早に食堂に向かう。誰も居ない。
厨房にも、廊下にも、スタッフの姿はない。
知らず浅くなっていた呼吸に目眩を覚えた。開け放たれたままの食堂の扉にもたれかかって、入り口付近の壁に備え付けられた内線電話が目に入った。震える指に受話器を取る。メイド室をコールするも、いつもならばすぐに繋がるはずの呼び出し音はいつまでも耳元に鳴り響くばかり。
誰一人として、人の声がしない。
ここには誰も居ない。
察した瞬間、背中にヒヤリ、何かが通り抜けた。
凍る背筋に思わず蹲る。
落ちた視線の先、誰も居ない食堂に煌々と灯る電灯に照らされ、床に伸びる己の影。
床に写る影を見つめる。影を凝視し続けるうち、無意識にろっこんを使おうと、己の影を立体化させようとしていることに思い至って、けれど一向に反応がないことを知って、月はとうとうくしゃりと顔を歪めた。
冷たい床に指を触れさせる。いつもならおぞましい気配を放ちつつ己が前に現れてくれる影は、縋るようにどれだけ呼びかけても反応がなかった。
(……何で？ 何で！？)
触れた指先に感じられるものはない。ただ己の影が揺らいでいるばかり。
「ッ、……」
影から瞳と指を引き剥がす。物音ひとつ、人影ひとつない世界を見渡す。
「誰かいませんか？」
放った声は己のものと思えぬほどに震えていた。
「誰かいませんか？」
声を絞って呼びかけても、返ってくるのは僅かな木霊ばかり。誰の反応もない。
「誰か、」
冷え切った身体に暴れ始める心臓を両手に抑え、
「誰かいないの！？」
悲鳴じみて叫ぶ。
「誰か！」
叫ぶ。反応は、無い。
誰もいない。
(誰も、いない)
誰も、傍にいてくれない。
自分以外に、自分のおぞましい影すらもいない恐怖に息が詰まった。
世界から逃げるように駆け出す。追われるように外に出たその瞬間、朝の眩しい光に瞳を刺された。打たれたように後退る。玄関の傘立てから日傘を手にする。
(誰か、)
星ヶ丘寮界隈の閑静な町並みを小走りに通り抜ける。人の姿はない。
人の気配のない街は、静かと言うより空虚で、その虚ろさに月は怯えた。
歩を進めるごとに肌を刺す朝陽に瞳を顰め、熱持ち痛み始める肌を指先に撫でる。道沿いのコンビニへ逃げ込む。
来客を告げるチャイムに応じる店員の姿もない。早朝にも関わらず明るく灯る電気も、豊富に並ぶ商品もいつものまま、けれど人の姿はない。
「誰か、」
人がいるかもしれないという期待を裏切られ、月は思わず両手で顔を覆った。
「誰か……」
祈るように呟く。人のいないコンビニを離れ、日傘の影を頼りにひとり街を彷徨う。飲食さえ忘れ、日が落ちるまで街に人を捜し続けて、――誰に会うことも、人の気配を感じることすらもないまま、疲れ果てて寮へと戻った。
(やっぱり誰もいなかった)
身体を重く侵す疲労と絶望とに肩を落とす。
コンビニと同じに品物ばかりがいつも通りに揃う寮の売店で紅茶のペットボトルを手に取る。いつも通りにレジに持って行こうとして、空のレジ前で立ち尽くした。知らず震える指先で、レジカウンターに代金を置く。
誰もいない廊下を渡り、自室に戻る。お気に入りのカップに紅茶を注ぎ、疲れ果てた身体を椅子に座らせる。渇き切った喉に紅茶を流し込んで、
(……美味しくない)
息を落とした途端、頬を涙が伝った。
零れる涙と共、いつも傍に居てくれるメイドであり友人である少女の名を呟く。
祈るように、縋るように、友人の名を呼び続ける。
身を支えていることすら困難になってきて、椅子の脇のベッドに倒れ伏す。肩を震わせ、息を震わせ、ひたすらに友人の名を呼び続ける。
泣き疲れて眠りにつくまで、ずっとずっと。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2016年03月23日
- 参加申し込みの期限
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- 2016年03月30日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2016年03月30日 11時00分
