かじかんだ指先を拳に握り込む。
「誰かっ……」
吐き出した白い息が朝日の白光に溶けて消える。自分の声でないような嗄れた声に思わず眉間を寄せて、咳払いをする。
「誰か、いませんかッ!」
吐き出した声の、今度は運動場に響き渡るような思いがけない大きさに唇を掌で抑える。そうしながら、冬風の吹き荒ぶ運動場を見渡す。運動場向こうの校舎を見遣る。
「誰か、」
いつもなら朝の早いこの時間でも、誰かしらが朝練に励んでいた。校舎の方にもたくさんの人の気配があった。
「誰か……」
踏み出そうとした足がすくむ。
ここには誰もいない。
ここにも、誰もいない。
空を流れる風の音がする。いつもならさまざまの音に掻き消されて届かない潮騒の音さえ微かに耳に届いて、思わず瞼を固く閉ざす。
朝起きて、家に誰も居なかった。先に出掛けたのだろうといつも通りに準備をして、家を出て、異変に気付いた。
いつもなら少なからず人が行き交う朝の道に、猫の子いっぴき居なかった。
参道商店街にも、寝子島街道にも。シーサイドタウン駅にもキャットロードにも、中学校にも小学校にも、どこにも人の姿がなかった。
居ないのは人だけでないと気付いたのはどの瞬間だっただろう。
空を渡る鳥も、家の庭で吠える犬も、陽だまりに丸くなる猫も、どこにも姿を確かめられなかった。
怖かった。
自分以外に誰もいないことが、こんなにも怖いことだとは思ってもみなかった。
「誰か……!」
渇いて澄み切った冬の青空に向け、悲鳴をあげる。
応える声はない。
こんにちは。阿瀬 春と申します。
今回は、たったひとりの世界をお届けにあがりました。
電気も水も、生活に必要なものはなにひとつ不自由はありません。コンビニだってスーパーだっていつも通りに開いています。ただ、店員の姿だけがありません。
危険は何にもありません。ゾンビも魔物も出てきません。
いつも通りのフツウの世界に、ひとりっきりです。
いつもならろっこんで召喚できる誰かもナニカも、今回は召喚できません。
朝は静かで夜は真っ暗です。もしかしたらどこかの家の電気はついているかもしれませんが、そこに人の姿はありません。
神魂の影響です。原因の究明はできないものとさせてください。
ひとりっきりの時間は一昼夜。次の日の朝には世界は元通りです。
でも、ひとりきりの時間がどれだけ続くのか、世界に取り残されたあなたにはわかりません。
ひとりきりをどうやって過ごしますか。
そうして、ひとりきりの夜を過ごして次の朝、元通りになった世界で、どんな思いで、誰に会いに行きますか。
よろしければ、お聞かせください。
もしも参加者のうちの誰かに会いたい場合はGAを組んでください。
会いたい誰かがいない場合も、アクションによっては参加者の誰かとランダムに出会うことがあるかもしれません。
※NPCの登場は今回はありません。ご了承ください。
ご参加、お待ちしております。