R&R Agency：File02：コピーする女｜リアクション

R&R Agency：File02：コピーする女

● 石原ナナコについての調査・３

　美野梨は早速開いて、五藤トモミと石原ナナコを探した。
　ふたりは３年Ｅ組のページにいた。
　髪を染め、化粧をして、この世界はなんてバカバカしいんだろう、みたいな目をしたふたりは、他のクラスメイトから浮いているように見えた。
「美人は美人だけどヤンキーさんな雰囲気アルなー」
　と華菜子が脇から覗きこんで言った。
「アルバムの中に華菜子って子はいないアルか？」
「そうね、Ｅ組にはいないみたい」
　ナナコたちの学年はＡ組からＥ組までの５クラスだったらしい。美野梨はＡ組から順に名前を確認していったが、やはり『華菜子』という名前の生徒は存在していなかった。
「犯人とは昔からの知り合いだったというわけじゃないのかしら？　それとも偽名？」
「どっちもありうるわね」
　ブリジットがそう答えて、ところで、と挑むような目で中刑事を見た。

「ねえ、中刑事、質問があるの。横浜でシュウマイのおいしいお店を教えて。ついでに、もう一つ、犯人についてどこまで知ってるのかをね」

　中刑事は腕組みをして少女たちの顔を見回した。
「うーん、まだ口にするほど確信を持っちゃあいないんです。それよりみなさんは、現時点でこの事件をどう考えますか？　――貴家さん、なにか考えがありそうですね」
　名指しされた衿花は、そうね……と眼鏡を拭ってから訥々と考えを口にした。
「恋愛絡みのトラブルかしら、とも思ったわ。華菜子の正体は男性でもありえるものね。ＶＲに映ったり誰かにみられても、犯人は女性と思われて捜査を攪乱出来るもの」
「なるほど。女とは限らないというわけですか」
　中刑事はメモを取りながら相槌を打つ。
　ブリジットにはそんな様子すら怪しく見えてしまう。
（そもそも、中刑事の言動には不自然なものを感じるのよね）
　お嬢様めい探偵であるブリジットは、びしり、と中刑事に人差し指をつきつけ詰問した。
「被害者二人と同年代の大学に通う娘を持つ親として被害者やその遺族への哀悼や犯人の義憤が感じられない。むしろ犯行を止めたい？　それって誰の為に？　そして犯行が異常者による無差別的なものでもなく怨恨といいながら、次の犯行が起きることを前提にしているのはなぜ？　あなたは犯人の復讐劇がまだ終わっていないことを知っている。それの理由も……それを知っているからこそ犯人に共感しながらも、それを止めたがっている、違うかしら？」
　いやはや……と、中刑事は胡麻塩頭をゴシゴシ擦った。
「じつは、気になっている人物はいます。ただ、いまのところ証拠はないんです」
「それは誰？」
「それは――」
　中刑事がいいかけたとき、卒業アルバムの中のスナップを眺めていた華菜子が声を上げた。
「もしかして、この人じゃないアルか？」