【お正月】初夢が見られなくなる！？｜リアクション

【お正月】初夢が見られなくなる！？

●邪魔された夢

　篠原翠響は、２３歳くらいの髪を優雅に結い上げ、ヴェールをかぶった清楚な印象のプリンセスラインのウェディングドレス姿の花嫁に。
（え？　うそ？　これって……）
　鏡に映った自分は、どこからどう見てもこれから式を挙げる花嫁にしか見えない。
　とてもお綺麗ですよ、と側にいる介添人達に言われ「あ、ありがとう……」と照れる。
「素敵なお嬢さんと結婚する旦那様が羨ましいわ。ロシアの方なんですってね」
　え？　と目をくりっとさせる翠響。思い当たる人物がいるのか、顔を真っ赤にして俯く。
　あれこれ考えているうちに挙式の時間に。
　父親と並んでヴァージンロードを一歩ずつゆっくり歩きながら、自分を待っているグレーのタキシード姿の新郎を見てビックリ。
（イ、イリヤ！？）
　イリヤ・ジュラヴリョフは旧市街のミルクホールの三兄弟の三男で、翠響がとても気になる異性だ。
　驚いたのは、予想が的中したからだ。大人になった彼と、こういう展開になるなんて……。
（心惹かれている人で……まだ片想いの段階だけど……こんなことに……）
　そんなことを考えているうちに、翠響はイリヤの隣に立っていた。
「綺麗だよ」
　微笑んだイリヤにそう言われたので、一瞬ドキッと。
「あ、ありがとう……」
　讃美歌を歌い終え、神父が夫婦の誓いを読み上げている最中、この後の展開を考えてしまう。
（夫婦の誓いの後は指輪交換で、その後は口づけだよね……って、それって……もしかして……！）
　様々な想像をしていたら、バァン！　と勢いよく教会のドアが開いた。
　突然の邪魔者は、夢から夢を逃げまくっていた獏と、追いかけていた数人。
（何よこのデブの根性悪そうなナマモノは……いきなり乱入してきて……こいつ、獏？）
　獏だとしたら、この幸せな夢が食べられてしまう。
「あたしの初夢を喰らう気？　冗談じゃないわよ！　幸せな夢を喰われてたまるもんですか！」
　ウェディングドレスを踏んで躓かないよう、翠響はスカートを摘まんで獏の後を追う。
（あの獏、デブのくせになかなか敏捷じゃない！）
　靴を脱ぎ、ウェディングドレスを破って丈を短くして必死に追いかける。
（せっかくのドレスが台無しじゃない！）
　ここまで来るのに夢を食べたからなのか、見た目によらず動きが素早い。
「あたしの夢、ぜーったい喰らわせないんだから！」

　翠響が獏を追いかけている頃、風雲児轟はヒーロー達が世界の平和のために団結する夢を見ていた。
　ヒーローの中には、超戦隊サイレンジャーと鬼面タイガーもいる。
「ねここテレビのヒーローもいるとは心強い。俺も皆と共に世界の平和のために戦うぜ！」
「それでこそヒーローだ。頼んだぞ！」
　ヒーロー達に仲間と認められ、轟は嬉しくなった。
　一致団結して世界の平和のために戦う誓いを……という時、轟に声をかけた鬼面ライダーが突然消えた。
　それだけでなく、サイレンジャーや他のヒーロー達も一瞬にして消えた。
　誰もいない空間で消えてしまったヒーロー達を探していると、どこかで大きなゲップ音が。
　音がしたほうを見ると、そこにいたのはブクブク太った獏がいた。
（こいつ……夢を食う獏ってヤツ……だよな。太ってるけど）
　だとしたら、夢の中のヒーロー達が突然消えてしまったのは納得できる。
「って、納得できるか！　おのれ獏！　ぜってぇ許さねえ！　戦衣着装！」
　自分と同じく獏に夢を食べられた人もいるはず。さっさと倒し、寝子島の人達の夢を取り戻すと意気込む。
「夢を食った獏はこのザ・ストレイトが許さん！！」
　轟の気迫にビビった獏はダッシュで逃げ出した。

「私達の制止を振り払うほど、力がついたようですね」
「そうですね。これ以上、夢を食べさせると獏さんが危ないです。綾花さん、追いかけましょう」
　綾辻綾花と森蓮が止められなくなるほど、獏は動きが俊敏になってしまった。
　食べ過ぎるとお腹をこわしてしまうかもしれない。そうならないよう、ふたりは轟の後を追った。