【お正月】初夢が見られなくなる！？｜リアクション

【お正月】初夢が見られなくなる！？

●想い人とのバリエーション多き夢

　八神修は、想い人の七夜あおいと遊園地にいる夢を見ていた。
「あおい、次は何に乗ろうか」
「メリーゴーランドがいいわ」
　恥ずかしいが、あおいが乗りないというので一緒に乗ることに。
　白馬に乗り「楽しいね、修君」と喜んでいるあおいを見ると、先ほどまでの気恥ずかしさは、どこかに行ってしまった。
　ジェットコースターやコーヒーカップに乗ったりした後はお化け屋敷に。
「こ、怖い……」
「大丈夫だよ、俺がついている」
　怖いお化けや人魂が出るので、怖くなったあおいは震えながら修にしがみついたり、時々、抱きついたり。
（あおいに頼られるのはいいものだ）
　ずっとお化け屋敷にいたいと思っているうちに、出口に辿り着いた。
「修君のおかげで最後までいられたよ。頼りがいあるね」
「そう言われると嬉しいな」
　お昼は、あおいが作ってきたお弁当を。
「うみねこに行った時、いろんなメニューがあったでしょ？　かき揚げを作ってみたんだけど……お弁当に合わないかな？」
　あおいは、修と大衆食堂「うみねこ」で食事したことを覚えていたようだ。その中で印象に残っていたのは海鮮かき揚げだった。
「うみねこでお弁当のおかずになりそうなもの、見つけたんだ」
「美味しく作れたかどうか自信ないけど、食べてみて」
「いただくよ」
　一口食べると、カリッとした食感が口の中に広がる。
「美味い」
「本当？　良かった」
　帰る前に観覧車に乗り、遊園地での出来事、お弁当の話など、いろいろな話で盛り上がった。

　遊園地に行った翌日、いつも通り寝子高へ。
　あおいと一緒に食堂でお昼を食べながら、今度の休みはどこに行こうかと相談し、一緒に帰る約束を。
　次の日も、同じ行動を。その次の日も、あおいと食堂でお昼を食べながら同じ話を。
　同じことが続く日々が何日も続いたかと思えば、寝子島は一晩で世紀末救世主漫画の舞台を思わせるほど荒れていた。
　荒廃した島民はモヒカンだったり、黒いレザー服の不良だったり、「消毒だ～！」と叫びながら暴れたり。
「寝子島……どうなっちゃったの？」
　不安がるあおいに、修は「大丈夫だよ、俺がついているから」と肩に手を乗せる。
　暴徒と化した島民に見つからないよう隠れたり、無人の店から食料を確保し空腹を凌いだり、眠ったり。
　そんな生活が数日続いた頃、悪戯が好きそうな自分たちと同じ年頃の少年の姿をした妖怪が姿を現した。
「おまえがこんなことをしたのか？」
　そうだよ、と悪びれた様子もなく答える妖怪。
　夢魔と名乗った妖怪は、人の心の住みつき、悪夢を見せる魔力を持っている厄介な存在だ。
（こんな奴に町を破壊されるとは……許さない）
　夢の中なら倒せるはず、と夢魔を倒そうとする修の横を何かが過ったかと思えば、夢魔は勢いよくどこかへ吹っ飛んだ。
　どうなったのかと考える間もなく、廃墟と化した寝子島の夢は終わった。
　荒廃した寝子島でのサバイバル生活、夢魔が何かに吹っ飛ばされる夢は何度か繰り返された。

　それからしばらくすると、今度は海外にいた。
「寒いね……」
「ああ。ダウンジャケットを着ていても少し寒いくらいだ」
　いつの間にか、ふたりの衣装は極寒の地で寒さをしのぐダウンジャケット姿に。
「修君、オーロラだよ。綺麗だね」
　あおいが空を指さすと、そこには緑の光が織りなすカーテンが見えた。
「オーロラか。綺麗だな。あおいと見られて嬉しいな」
　寄り添って、互いの体温で温まりながらオーロラを見つめていた。

　修の夢が多いのは、浅い眠りの時に見る夢、要するに入眠から覚醒までに複数の夢を見ているからである。
　脳が眠っていても、夢を見ると考えられるケースも。
　寄り添って互いの体温で温まりながらオーロラを見ていると、何かが地響きを立て走ってきた。
「な、何？」
「あれは……獏か？　中国の伝説上の生き物で、夢を食べると言われているんだ」
　せっかくの夢を食べられてたまるか！　と修はあおいの手を引いて走り出した。
「あおい、逃げるぞ！」
「うん！」