【お正月】初夢が見られなくなる！？｜リアクション

【お正月】初夢が見られなくなる！？

●壊された理想

「いろんな人の夢が見られるってドキドキします」
　獏がお腹が重くて歩けなくならないかと心配する綾辻綾花は、お腹を摩りながら寄り添う。
　森蓮も心配しているが、今のところは大丈夫なので一安心。
　ふたりと歩いている間に何人かの夢を食べたが、空腹が紛れるならと見逃していた。
「お腹、壊さないようにね」
　知人、友人の夢は食べちゃダメと言い聞かせ、綾花は動きが遅い獏を押して進ませる。
「綾花さん、誰かの夢に辿り着いたようです。獏さんを見張っていてください」
　蓮にそう言われた綾花は、獏を宥めながら制止した。

「ついに！　ついに身長が１８０超えた！」
　童顔で大きめの吊眼にピンクゴールドに近い茶髪。
　ふたつの赤いヘアピンという特徴は変わらないが、身長は１５３センチから１８０センチくらいに。
　伸びた身長に、卯木衛は猛烈に感激していた。そんな彼がいるのは、授業が終わったばかりの教室。
「卯木君、お願いがあるんだけど」
　黒板消しを持ったクラスメイトが、届かないところを消してほしいと頼む。
「ありがとう。卯木君がいてくれて助かるわ」
　体育の授業では、バレーボールでアタックを決め大活躍。
「卯木と一緒で良かったよ。おかげで楽勝！」
　同じチームのクラスメイトとハイタッチ、というが、衛の身長が高いので背伸びして。
　学校帰り、風船が木にひっかかってしまい泣いている女の子を見かけたので、割れないように取ってあげた。
「ありがとう！」
　女の子の笑顔を見て、感謝されるのっていいなと衛は嬉しくなった。
　家では、高いところのある物を取ったり、電球をとりかえたりと頼りにされた。
　多くの人に頼られ感謝される喜びに浸っていたら、獏が綾花の制止を振り切り、衛の夢を食べてしまった。
　そのせいで、衛の身長は元通り。
「身長がっ！　身長が縮んじまったじゃねーか！！　こいつが……夢を食べちゃったのか？　そのせいで……」
　だとしたら許さない！　と怒り心頭の衛。
　ゲップをした後、獏は回れ右してゆっくり歩き出す。
「俺の夢を返せ！」
　捕まりたくない、綾花に怒られると思った獏は、逃げるようにその場を去った。
　うまい具合に綾花と蓮のところに辿り着けたのは不幸中の幸い。

　衛が獏を追いかけている頃、立花なつは、寝子島のどこかをひとりで歩いていた。
「あれ？　ここどこ？　……誰かいないー？」
　辺りを見渡すが、人っ子一人いない。どうやら、彼ひとりだけのような。
「俺ひとりだけなんてつまんないなぁ」
　歩き回っていれば誰かに会えるだろうと思いながら歩いていると、獏を追いかけている衛とばったり。
「まもる、何やってんの？」
「なつくん、変な生き物見なかったか？　俺、そいつに夢を食われたんだよ」
　事の経緯を、なつに説明し終えると「絶対に許さない！」と怒る衛。
「そっか～。ここは俺達の夢の中なんだねぇ。じゃあ、俺もまもるも、かーちゃんみたいにろっこんってやつ、使えたりするのかな～？」
「夢の中だから何でもできるんじゃないか？」
「そっか～。じゃ、試してみよっと」
　どんなろっこんなのかな～？　と衛の肩をポンと叩く。
　触れられた肩は丸くなり、胸がＢカップサイズくらいに膨らんだ。違和感を感じた衛は、胸に触れてみる。
「お、おっぱいが！」
　それだけでなく、服はどういうわけかスカートに。
「何でだ！？　何でだよ、なつくん！！」
「どうやら、さっき使ったろっこん、触れた対象を女体化させるろっこんみたいだねぇ」
「何ー！？　だったら、身長伸びるろっこんにしろよ！」
　なつにまで夢を台無しにされたので、衛の怒りはおさまらず。
「いや～、さっきまでひとりだったからさあ～……一緒に歩いてくれる女の子でもいたらな～……なんて思ってたからかなあ？」
　怒られても悪びれないなつに「あーもう！　しょうがないなーっ」と衛は頭を掻いた。
「その代わり、獏退治の道中をしっかりリードしろよな！」
「まもるにお願いされたら断れないねぇ」
　行こう、とふたりは獏を追いかけた。

　獏の危険を察知した綾花と蓮は、ふたりに気づかれないよう衛の夢から立ち去った。

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