【お正月】初夢が見られなくなる！？｜リアクション

【お正月】初夢が見られなくなる！？

●空想科学と電脳仕事

　将来の夢は宇宙飛行士な神薙焔は、オールドスタイルなシューティングゲームの高機動宇宙戦艦に騎乗している。
「宇宙を駆け巡るわよ！」
　操縦桿を握りしめ「ぶっ飛ばすわよ！」と気合いを入れる。
　服装は何故か寝子高の制服だが、細かいことは気にしない。
　その最中、銀色のどことなく鷹に似た飛行物体を発見。地上には実物より大きめの富士山が。
「初夢で見ると縁起が良い１富士、２鷹ね。……とくれば、パワーアップアイテムは茄子の形をしているのも必然ね」
　茄子を見つけてパワーアップよ！　とスピードを上げる焔。
「３茄子発見！」
　逃すもんですかと宇宙戦艦の速度を上げたその時、太った奇妙な動物がいきなり出現。
（浮いているあの生き物は何かしら……でっかい海産物っぽいボスが出るゲームなら知ってるけど……）
　宇宙を飛ぶには適切じゃないカタチの敵？　と思ったが、オールドなシューテングには珍しいことではない。
　機体が小麦色の肌のマッチョなゲームもあるので、こんな敵がいても変ではない。
「あいつ、アイテム横取りして食べようとしてる！　ということは敵ね。一気に肉薄して……名人ばりの秒速16連射！」
　くらえ！　とミサイル連射するが、太った生物は逃げ出した。エフェクト付きで。
「どこかにワープしたみたい。よし、こっちもワープよ、ネクストステージへレッツゴー！」
　宇宙戦艦はワープできるが、どこに出現するかわからない。どこに行くのやら……。

　北玄は、有能なシステムエンジニアとしてアジャイルソフトウェア開発のレトロスペクティブをしている。
「レトロスペクティブは何か？　です？　有能な僕が説明するです！」
　では、説明お願いします。
「チームの作業方法を見直すため、プログラマの人とかから、どこがうまくいって、どこがダメだったか、何を続けるべきで、何をやめるべきか、不満はないか、予定どおりに作業が進む自信を１(自信がない)から１０(自信がある)で表わしたらいくつか、自信が無いならその理由は何か、とかを聞くことですよ！」
　コホン、と咳払いしてから再開。
「失敗しそうな兆候を早く見つけ、できるだけ間違いに気づくですよ！　個人の責任は追及せず、問題解決に専念するですよ！」
「北さん、その説明はいいです。今はプログラム改善策のミーティング中です」
「そ、そうですよ！　どうして説明してたです？」
　働きすぎで疲れているのか、とチームの一員は玄を心配する。
　改善策の具体的な内容は、予想より長くなりそうだったので一旦中断して休憩タイムに。
「休憩が終わったら、ちゃんとしたミーティングで話し合うですよ！」
　リラックスするです、と自販機がある休憩室へ向かう途中、何かが素通りしたような気配が。
「今のは何だったのです？」
　気のせいです、と自販機で缶コーヒーを買って飲む。
　休憩終了後、会議室が何やら騒がしい。
「どうかしたです？」
「プログラマーから、作業場の空調が壊れて寒いとか、変な動物が入ってきたという不満が出たんです」
　多数の苦情で、チームは対応しきれない状況に陥った。
　休憩中の短時間でどうしてこうなるのかという疑問を考える間などない。早急にどうにかしなければ。
「電機屋さんと害獣駆除業者に連絡して対処するですよ！」
　チームの誰かが連絡しようとした時、ドォン！　という大きな音がした。
「いたた……」
　焔が乗っていた宇宙戦艦は、玄の職場の会議室にワープしたようだ。
　激突してしまったことを詫びるため、焔は宇宙戦艦から降り、玄に頭を下げた。
　その後、どうしてこうなったかという事情を説明した。
「夢の中を行き来する生き物です？　それは獏ですよ！」
「獏？　夢を食べようとする生き物ね、聞いたことはあるわ。私の夢を食べようとしていたのかしら？」
「そうですよ！　だとしたら、他の人の夢をたべるかもしれないですよ！　駆除すべきですよ！」
　一緒に行きましょうという焔の誘いに応じ、玄は宇宙戦艦に乗り込んだ。