ウィンター！部活動のお時間です！～運動部編～｜リアクション

ウィンター！部活動のお時間です！～運動部編～

　荒太郎はフリーで体を慣らし、タイム測定をしようとレーンを移動した。
　夏とは違う、屋内プールならではの少し温かい水。何だか温泉みたいだなと荒太郎は思う。
（でも特別な感じがしてちょっと気分が引き締まるよ。こういうのも好きだな）
　夏は涼を求めてプールに入る部分もあるが、冬の水泳というのは純粋に泳ぐためにするのだ。だからこそ夏よりも練習に身が入る。
（負けないぞっ！　ぼくだってこの１年で水への苦手意識は克服したからね！）
　気合いを入れてコースに立つ。

「雨崎、泳ぎまーす！」
　ホイッスルと同時に荒太郎は元気よく泳ぎだした。

「荒太郎くん、だいぶ早くナッタネ！　頑張った頑張った☆　……って、どうしたの？」
　自身のタイム測定を終えた武道がプールサイドで体育座りをしている荒太郎に声をかける。荒太郎は「あ、武道先輩……」とちょっと顔を上げたが、また力無く顎を膝に乗せた。
「この高校のみなさん、やっぱ速いです……。ぼくも１年頑張ったのに……」

　タイム差は歴然だった。手を伸ばしても伸ばしても追いつけない、必死でもがいても泥沼を泳いでいる様で、泳ぎ終わった時荒太郎はもうヘトヘトになっていた。
「どうすればあんなに速くなれるんでしょう。ぼくフォームがおかしいのかな。やっぱりそもそも素質が……」
　その時突然荒太郎は武道にガバッと抱きつかれた。
「せ、先輩？！」
「すごいゾ！　荒太郎くん！　成長したねぇ！　お父さん嬉しいよ」
　戸惑う荒太郎をぐりぐり撫でながら武道は目頭を押さえてウンウンと頷く。そしてニカッと笑って横を見上げた。
「ね、紫先輩？」
「そうね。水恐怖症を克服しただけでも凄いのに、もう次のステップを目指してるのね」
　いつの間にか傍に来ていた紫が静かに微笑む。その後ろからののこ達と別れ、こちらのレーンに来た小麗もひょいと顔を出した。
「すごいぞ荒太郎頑張ってるのだ！　小麗も負けられないのだ！」
「うん、目標を持つのはいい事だ」
　ひたすら泳ぎ続けていた士も水から上がり、腕組みをして大きく頷く。温かい仲間達に囲まれ、荒太郎は胸が熱くなった。

　その時まゆの声がした。
「お、チームワークを高めているのかな？　何より何より」
　まゆの後ろからはののこと美弥子がすがすがしい顔をして歩いてくる。彼女達も実のある練習が出来たようだ。
　まゆが部員達の前に立った。
「水泳は個人種目だからこそ、チームワークが大事になるの」
　部員達は静かにまゆの言葉を聞いている。
「支え合い、一緒に悩み、切磋琢磨してお互いが伸びていく。仲間の笑顔が自分の力になる」
　そしてまゆはにっこり笑った。
「それが出来るのが寝子高水泳部だもんね！」
「「「「「―――ハイッ！！」」」」
　全員が揃って大きく返事をした。まゆは嬉しそうに頷く。
「よーし、これから練習試合だよ。出場する人は気合い入れて！」
　寝子高水泳部はプールサイドで円陣を組む。大きな声が屋内プールに響き渡った。

「「「「「寝子高水泳部、ファイトーーーッ！！！」」」」