ウィンター！部活動のお時間です！～運動部編～｜リアクション

ウィンター！部活動のお時間です！～運動部編～

　まゆのしごきを受けた武道はゼーゼーとプールサイドで息をついていた。

「いや……もう……まゆセンセってば……☆」
　こんな状態でも語尾に☆を付けるところが武道である。いやぁまいったと肩で息をしながら座っているその彼の目の端に、同じようにしごきを受けながらももう飄々と練習を始めた士の姿が映った。
（どんだけ体力オバケだよ……！）
　呆れるやら感心するやら。いや、彼は熊だから比べちゃいけないのかもなんて思っていると、スッと武道の横を紫が通った。
「……自分のペースで、ね？」
　彼に言葉を残し、タンッと綺麗な飛び込みをしてフリースペースで泳ぎ出す。その優雅な様に武道は少し見とれていた。
（紫先輩はフォーム綺麗なんだよな……）
　武道は相手校の生徒達に視線を移す。そしてその泳ぎ方を熱心に観察し始めた。
（お、あの人伸びがあるな……。うわ、あのターン超早い！）
　水泳というのは実はとても頭を使うスポーツだ。浮力の使い方、水の抵抗と自分の体とのバランス、掻く角度が少しでも違うとタイムもフォームも大きく変わっていく。そして何より大切なのは、それを仕上げていく自分の感覚だ。泳ぎに正解はなく、試行錯誤の末ドンピシャはまった泳ぎが出来た時、水が自分のものになる感覚が味わえる。
（よし、次はターンをもうちょっと手前でやってみるかな）
　俺は俺だ。
　だからこそ、色んな事を考え、色んなものを吸収して自分のものにしていきたい。映像で見るものと、間近で空気を感じながら見るものは随分違う。だからこそとても参考になるし、こういう機会にしっかり練習する事が大切だ。
「よっし！　クロールと背泳ぎを重点的にっと」
　武道は本日数度目のタイムを計りにまたコースに向かう。こうして他校の生徒のタイムと自分のタイムを比べたりして自分の練習を仕上げていく。フォームの違いもタイムの差も怖くはない。それを踏まえて練習する事で、また自分の力になっていくのだから。

　実は以前まで、武道は水泳にあれこれ思い悩み、スランプに陥っていたのだ。
　けれど武道は水泳から逃げなかった。苦しくても泳ぎ続けた。そしてそんな彼の情熱と周囲の温かい支えのお陰で、いつの間にか武道は暗いトンネルから抜け出す事が出来た。
（―――俺はやっぱり泳ぐのが好きだ！）
　スランプを乗り越えた武道は今、泳ぐ事に非常に貪欲なのであった。

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