ウィンター！部活動のお時間です！～運動部編～｜リアクション

ウィンター！部活動のお時間です！～運動部編～

　まずは用具の搬出だ。部員達は望月が用意していた使い捨てマスクや軍手を装備し、えっちらおっちら、力を合わせ搬出作業に精を出す。
　今回は用具の点検も兼ねているので、全ての物を運び出すから数も多い。古い高跳びマットは幸太や男子部員達が協力して外に運び出す。女子も自分の持てる物をしっかり持って頑張っている。
　ハードルを抱えたといきがマットを持つ幸太を抜きざま、にっと笑って声をかけた。

「先生も若くないかもしれないけど、男子なんだから頑張って力仕事するにゃ！」
「だから俺はそんな年じゃなーい！」
　片手を振り上げ抗議する幸太の声を背中に聞きながら、といきは「ごめんなさーい！」とペロリと舌を出しぴゅーんと逃げる。そのままハードルを抱え、備品台帳と器具を交互に睨めっこしている望月を見つけて近寄っていった。
「先輩、ハードルはどこに置けばいいですにゃ？」
「あ、とりあえずは全部あのブルーシートの上に置いといて。そこで選別してっから」
　そこで望月はふと台帳を閉じ、まじまじとといきの顔を見た。
「……といきちゃん、顔赤いけど風邪か？」
「え？　え？」
　望月から不意打ちを食らったといきは、思わず片手で頬を押さえる。
「つらかったら休めよ」
「だ、大丈夫ですにゃ！」
　心配そうな望月にあはははと笑いながら、といきは急いでその場を離れる。
（きっと浅井先生と話したからだ……！）
　下を向きながら足を速めるといき。その間にも幸太の笑顔を思い出し、どんどん顔が赤くなってしまうのだった。

　部員達がテキパキと運び出したお陰で、用具入れ前のブルーシートは出された器具でいっぱいになった。用具入れの中をもう１度確認し、拓郎は望月に報告に行く。
「あらかた……出し終わったと……思い……ます、宇佐見先輩」
「おいっす、お疲れー。サンキューな」
　ブルーシートの前に座り込みながら望月は拓郎に片手を挙げる。そこに侑も顔を出した。

「このコーンヒビ入ってますよ、先輩。うーん、どこからを捨ててどこからを残すか悩むにー」
「そだなー。そこら辺こーちゃんセンセと台帳見ながらやってくよ。拓郎ちゃんはもうちょっとここで力仕事頼むわ。侑ちゃん達女子は掃除の方お願いしていいか？」
「わかり……ました」
「わかったに！」
　先輩の指示に１年生がまたそれぞれの持ち場についていく。望月は備品の台帳を片手に幸太と話し合いだ。
「更新５年以内のと、古くても高い器具は使えそうならなるべく残すとして……。どうっすかね、ここら辺大丈夫っすか？」
「そうだな、年数経ってるけど見た感じは大丈夫そうだな」
「あ、拓郎ちゃん、あっちのはもう処分のヤツだから、大八に乗っけてくんないか？」
「はい」
「そんじゃこっちなんすけど、先生……」
「……」
「……センセ？」
　こちらを見たまま黙ってしまった幸太に、望月は訝しげに声をかける。幸太はその望月の顔をじっと見ていたが、笑顔でぽんと彼の肩を叩いた。
「いや、望月もしっかりした先輩になったと思ってな。頼もしいな、先生嬉しいぞ」
「……な、な、何言ってんすか！　そんな事より早く仕分けしちゃいましょーよ！」
　ストレートな幸太の褒め言葉にどぎまぎしながら望月は仕事を再開する。けれども内心はとても嬉しい望月であった。