授業風景～１年５組の場合～｜リアクション

授業風景～１年５組の場合～

　◆　１３：１０～　◆

　昼食後の休み時間ということもあって、１年５組の教室内はざわざわと落ち着かない。
　空腹が満たされ、くつろいだ気分になっている生徒が多いためか、そのざわめきにはどこか楽しげな響きがある。

　探検部のパンフレットに目を通していた邪衣士は、クラスメイトではない顔を教室内に見付け、なるほどと思った。
　授業と授業の間の休み時間と比べ、昼休みは長い。１年５組の教室内には他のクラスの生徒も来ていて、逆に、まだ教室に戻ってきていないクラスメイトもいる。
　５時限目開始間近になるまでは、生徒の出入りも多そうだ。

　隣の４組所属の綾辻綾花は、慌てた様子で七夜あおいのところに来ていた。
「あおいちゃん、国語の教科書借りてもいい？」
　すまなそうに頼む綾花に、あおいはいいよと快く答えて、机から国語の教科書を引っ張り出す。
「あ、でも６時限目が国語だから」
「分かりました。終わり次第、すぐに返しに来ますね」
　綾花は借りた教科書を胸に抱いて、こくりと頷く。
「あおいちゃんのところは、次の授業は何ですか？」
「うちは化学だよ」
「化学……」
　綾花はちょっと複雑な表情になった。文系の綾花は、理系の課目には苦手意識がある。
「五十嵐先生の授業だから、眠っちゃいそうで心配だよ」
「そうなんですか……がんばってね」
「うん、ありがと。がんばるね」
　眠らないように、とあおいは笑って、小さくこぶしを握ってみせた。

「次は化学、ということは担任の五十嵐先生ですね」
　森蓮は授業開始の時間よりかなり余裕をもって、教室に戻ってきていた。
　まだ皆がざわついている頃に化学の教科書やノートを取り出して、机の上にきちんと並べて授業の準備を整える。
「今日はｍｏｌ計算……化学の要ですね」
　教科書をめくっての予習にも余念がない。
　黒井静はいつもと同じに、ヘッドホンから流れてくる音楽に耳を傾けている。
　昼休みの喧噪も耳に入っていなさそうだ。
　そんなクラスメイトたちのいつもの様子を見て、七海雪乃は微笑んだ。

「５時限目に化学だなんて、眠れと言わんばかりだよね」
　猫村翡翠は机の上で、とんとんと教科書とノートを揃えた。
　答えを期待していったのではなく、ただの呟きだったけれど、それを耳にした西野町かなえがそうやなと同意する。
「五十嵐先生も、もうちょっとちゃきちゃき喋ってくれたらええのになぁ」
　一本調子で淡々と読まれる教科書は、まるで子守歌のように生徒たちを眠りにいざなう。
「油断してると眠りそうだから、気をつけないとね」
「ほんまにそうやな。寝てもうたら、授業についていけなくなってしまうわ」
　かなえは気合いを入れるように、両手で頬を軽くぽんぽんと叩いた。

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